武田信玄を守護…一子相伝の武術が源流「影武流」を体験 記者が悶絶した500年の重み
かの有名な戦国武将・武田信玄を守護していたという家伝武術が、進化発展を重ねながら伝承され、現代武術として一般にも開放されていることをご存じだろうか。その名も影武流合氣体術。武田信玄の命を受けた7家のうちの一家である雨宮家で伝承されてきた家伝武術をもとに創始された体術だ。1520年から門外不出・一子相伝で受け継がれてきた武術の一端を垣間見ようと、日刊ゲンダイ記者が稽古にお邪魔した。
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師範は雨宮家の宗家である雨宮宏樹氏(43)。3歳から祖父と父に伝承を受け、2010年に影武流を創始して門戸を開放した。現在、約110人が在籍しているという。
神奈川県の横浜支部で開かれている稽古に足を運ぶと、この日は老若男女約30人の生徒が参加していた。正座をして黙想、開眼、礼を終え、まず始まったのは「流水」と呼ばれる歩法の練習。いわば基礎訓練だ。
手の力を抜いて太ももの前側に置き、草履が脱げないようなイメージで水のごとくスルスルと歩く。体を前に傾けると自然に足が前に出る感覚を持ちつつ、みぞおちが引っ張られて前に進むイメージを描くのがコツ。体を一枚の板と考えれば、面が均一に進む感じだ。
流水を身につけると、例えばパンチの威力も増す。力を入れずとも重心移動で放たれるパンチは「体当たりに近い」(雨宮師範)という。
基本となる歩き方を教わった次は「居捕」や「座り技」と呼ばれる練習だ。2人1組になって正座して相対する。互いに軽く片手を前に差し出し、1人が相手の手の甲に手のひらを重ねる。手を重ねられた側がゆっくりと手のひらを返しつつ下ろし、手のひらを重ねた相手の体勢を崩す。これがなかなか難しい。
姿勢を崩そうと思うと、うまくいかない。手の甲から相手の手のひらに緊張が伝わると崩せないが、「手の甲に丸みをつけてこわばった部分をつくらないようにするのがコツ」(雨宮師範)とのこと。逆にこちらが手のひらを重ねると、面白いようにコロコロ転がされてしまう。手が吸いついて離れずに体勢を崩される不思議な感覚だった。