合同採用説明会で見た「保育士不足」のリアル…東京都も神奈川に“遠征”して人材確保に必死
どこもかしこも人手が足りない……。そんなご時世で、保育業界もまた、人手不足が深刻化している。今年1月の保育士の有効求人倍率は3.54倍で、全職種平均の1.35倍と比較してもかなり高い水準で推移している。その窮状は、保育士の合同採用説明会が毎週、さまざまな地域で開かれている様子からもうかがえる。業界の実態を探るため、8月中旬に神奈川県某所で開催された合同採用説明会に、20代後半の日刊ゲンダイ男性記者が潜入した。
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「あー、ごめんなさい……。ウチは男性社員を採用してなくて。トイレとか更衣室とか、受け入れる環境が整ってないんですよ。本当は人手不足なので、男手も欲しいところなんですけどね……」
勇気を出して会場の一番手前にある保育事業者ブースの女性に声をかけたところ、こんな反応が返ってきた。150坪ほどに20の事業者が出展していた会場には、求職者が70人ほど。その中に男性はほぼ見当たらず、女性ばかりでただでさえアウェー状態。取材を始めようとしたところにいきなりジェンダーの壁が立ちはだかり、心が折れそうになった。
見るからにしょんぼりしていたのか、説明会の男性スタッフに話しかけられ、案内をしてくれた。いろいろと質問を投げかけているうちに、男性スタッフは業界の実情についてこう打ち明けた。
「人手不足は実際厳しいです。だから、今日もこういったイベントが開かれているわけです。保育士は離職率が高いので、少しでも対面の機会を増やし、職場のミスマッチを防ぐ狙いもあります。男性? もちろん歓迎ですよ!」
イベントでは、高級住宅街などで知られる東京23区のとある自治体も、ブースを構えていた。予算が潤沢な東京都の保育は、人手不足とは無縁に思える。
一体なぜ、神奈川県にまで“遠征”しているのか。担当者はそのワケをこう話す。
「東京都は子供の数が多く、保育士を採用しても全然追いつかないんです。だから、上限8万円の家賃補助や、独自の処遇改善手当を設けることで待遇を良くし、他の自治体から保育士を呼び込もうとしています。ハッキリ言って、人の奪い合いですので(苦笑)」