210安打達成した94年 イチロー極秘契約更改交渉の中身
1994年のシーズンオフのこと。わたしはイチローを自宅に呼んだ。秘密裏に契約更改の事前交渉をするためだ。
イチローはその年、プロ野球記録(当時)となる210安打を放った。プロ3年目で、10月に21歳になったばかり。マスコミはこの年800万円だった年俸が、いったい、いくらまでハネ上がるのかと大騒ぎ。おそらくするであろう事前交渉の行方を探ろうと、報道陣は朝から晩までイチローにピッタリと張り付いた。
わたしは交渉場所を自宅に決め、イチローにはこう告げた。
「とにかく夜、寮に普通に帰り、消灯時間になったら部屋の電気を消しなさい。そうすればマスコミはきょうは何もないと思って引き揚げる。その後、オレの自宅に来ればいい」
わたしは当時、JR神戸駅近くのマンションに住んでいた。イチローにはだいたいの場所を告げ、さらにこう指示した。
「いいか、マスコミがいなくなったのを確認したら、自分の車でうちまで来なさい。近所まで来たら、駐車場を見つけて車を止め、電話をするように。駐車場まで迎えにいくから」