著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

ブッシュ元大統領が生涯大切にしたベーブ・ルースとの1枚

公開日: 更新日:

 そのようなブッシュが、生涯大切にしたのが、48年に撮影された一枚の写真だった。

 この写真には、大リーグ史上最高の選手であるベーブ・ルースがエール大学に寄贈した自伝の原稿を、エール大学野球部の主将として受け取るブッシュの姿が記録されている。

 選挙でも議会でも、対立する相手から「名家の御曹司」と言われると、ブッシュは写真を指さし、自分が「高慢な世間知らずの2世政治家」ではなく、「野球の神様との握手に感激する純粋な青年だ」と強調した。

 ルースとの一枚の写真を有形、無形の資産にしたブッシュを、息子で後に第43代大統領となるジョージ・ウォーカー・ブッシュも参考にした。

 父の大ブッシュと同様にテキサス州から連邦下院選に出馬した小ブッシュは、やはり地縁のなさが問題視され、「確かに彼の父は中央政界で活躍している。だが、彼自身はテキサス州のために何もしてこなかった」という対立陣営の中傷により、落選している。

 その後、小ブッシュはテキサス州の石油会社を経て、89年にテキサス・レンジャーズを買収した。小ブッシュは、「テキサス州のために何もしてこなかった」という批判に、州を代表する大リーグ球団を経営することで応えようとした。

 レンジャーズの共同オーナーを務めたことで、小ブッシュはテキサス州の政財界で人脈を広げ、94年にテキサス州知事に選出されて政界への進出を果たしたのだった。

 米国有数の名門ブッシュ家と大リーグとの関わりは、思いのほか深いのだ。

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