令和元年も渦巻く欲望…夏の甲子園“ネット裏怪情報”
それでもなくならない「サイン盗み」
「監督会議では、とにかくアンフェアなことはやるな、勝つためにズルをするな。そんな話ばっかりでしたよ」
甲子園に出場する強豪校の監督は、苦笑いを浮かべてこう言う。
春のセンバツで習志野(千葉)によるサイン盗み疑惑が勃発。今大会から4人とも5人ともいわれる審判員がネット裏に陣取り、不正行為に対して目を光らせているのだ。窪田哲之審判規則委員長はこう言う。
「罰則のあるものないものを含めて、徹底してチェックしている。例えば、盗塁の際に打者が捕手寄りに立って邪魔をするとかですね。アンフェアな行為をなくすことは簡単なことではないが、この方針を全高校に浸透させたい。高校野球ですから、基本的にこれもダメ、あれもダメ、と罰則は作りたくないんですけどね」
それでもサイン盗みをはじめとするインチキ行為は今大会でもはびこっている。
「サイン盗みなんて、やってくるというのが前提。ブロックサインや、伝令を送って対処すればいいんですから。例えば、1死一塁から犠打を仕掛けてくるような学校は、二塁からサインをのぞくのが目的だと思った方がいい。盗まれて泡食ってるような学校では勝てません」
とは、さる関東の出場校の監督だ。
九州地区のある出場校と対戦した学校関係者は、「二塁走者が怪しい動きをしていたので、バッテリーはサインを変更。打者は全然違うコースの球を空振りし、二塁走者は天を仰いでいましたね」と振り返る。
実際、習志野(2回戦敗退)に対しては、対戦相手もピリピリしていた。初戦で敗れた沖縄尚学(沖縄)のある選手はこう打ち明けた。
「ミーティングでは、むしろサイン盗みを警戒しすぎることはよくない、という話が出ましたが、対策は練りました。一塁に走者が出たら捕手は股でサインを隠す、二塁に進塁したらサインを変える、という方針でした」
習志野を撃破した鶴岡東(山形)も、これに似た対応をしたという。
「高野連は不正行為について、事を荒立てたくない。でも、ベスト16に残ったのは勝つためには何でもアリ、という学校がほとんど。高野連にはすでに、この学校が怪しいというタレコミが入っていて、再びサイン盗み騒動が起こる可能性は十分にある」
とは、さるプロ野球のスカウトだ。
■全額免除に小遣いと帰省費用
「入寮する際は手ぶらで来てください」
東北地区の私立高の選手は高校入学時、こう言われたという。アマ球界事情通の話。
「高校野球で授業料免除の特待生は当たり前。手ぶらとはつまり、本来なら必要な入学金、部費、寮費、道具代など、すべての費用は学校が面倒を見るということ。中には、実家に帰省する際の往復交通費や、月数万円の小遣いまで用意する学校もある。大阪や兵庫は府や県の方針で、一定の年収以下の家庭は授業料が全額免除になるため、地方の学校が大阪や兵庫の中学生を獲得する際に、授業料免除に加えて、こうした“サイドレター”を加えるケースが多い」
しかし、昨今の少子化に加え、野球人口はどんどん減っている。
学校が資金難に陥っているといわれる関東の強豪校を巡っては、こんな声が聞こえてくる。
野球部OBの保護者が言う。
「入部直後に突然、サプリメントやプロテインの3年分の代金として、30万円ほど要求された。そんな話は聞かされていなかったので、びっくりしました。領収書はもらえず、途中で退部しても残金は戻ってこない。1学年の部員数は約30人だから、それだけで900万円です。特待生を迎える費用をそうやって捻出しているのでしょう」
その学校は、某プロ野球選手の子息が通ったが、いじめに遭って退学したという。
「私立では、『手ぶら』で来る選手を除けば、寮費、部費で月平均7万~8万円はかかる。関西の優勝経験がある強豪校では、道具代だけで年間20万円を要求されるらしい。借金して野球をやらせる親も多い」
とは、前出の事情通だ。