大一番でスタメンの福岡堅樹にスコットランドは面食らった
「5、4、3、2、1、ゼロー!」
電光掲示板の時計が試合終了を示す後半80分に近づくと、横浜国際競技場を満員に埋め尽くした6万7666人の大観衆は、自然とカウントダウンを始めた。
ちょうど80分を知らせるホーンがスタジアムに鳴り響いた時、スクラムハーフの田中史朗は後方で待つフルバックの山中亮平へパス。それを受けた山中がタッチにボールを蹴り出した瞬間、この10年間、日本ラグビー界が最大の目標として掲げたW杯ベスト8の悲願は叶った。
スタジアムは割れんばかりの大歓声に包まれ、思わず胸に熱いものがこみ上げる。ラグビーの歴史が変わったーー。その現場に立ち会えたことが、これほど幸せに感じるとは思いもしなかった。
それにしても、後半のスコットランドの逆襲には鬼気迫るものがあった。前半を終えた段階では21対7という大差でジャパンにリードを許していたにもかかわらず、後半に入ると怒涛の反撃。後半55分には1トライ1ゴール差の28対21にまで肉薄したのである。残り時間は約25分。多くの日本人が逆転されることを覚悟したのではないだろうか。