大高宏雄の「日本映画界」最前線
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東宝期待2作品がまさかの空振り…「正月興行」に異変アリ
今年しょっぱな、映画界にちょっとした異変が起きた。常勝会社の東宝が、正月興行で東映の後塵を拝したのだ。東映がヒット作を2本連発したのに対し、東宝は期待の実写作品2本が空振りに終わった。 東…
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市原悦子さんは自然に役柄を生きる新劇俳優の王道だった
今月12日に亡くなった市原悦子さんは、まさに新劇俳優の王道を歩んだ人だったと思う。それは、名門の俳優座の出身者にして、演劇、テレビ、映画など多ジャンルで活躍した幅広い芸歴を表す意味ではない。新劇俳優…
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妻夫木聡は「来る」の収穫 2018年邦画俳優ベスト3発表
年末なので、2018年の邦画俳優ベスト3を選出しようと思う。 【1位】妻夫木聡(38) 中島哲也監督のホラー仕立ての正月映画「来る」の一番の収穫は妻夫木聡だった。仕事でうまくやりくりをし、家庭…
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単館系正月ムービーはインド製作の“ナプキン映画”が面白い
正月映画は、大手の映画なら妻夫木聡の怪演がすばらしい「来る」を推すが、単館系ではインド映画の「パッドマン 5億人の女性を救った男」が抜きんでて面白い。女性の生理用品(ナプキン)を安価に製造して成功を…
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東宝シンデレラ出身 山崎紘菜&上白石萌音“W主演”の狙い
なかなかユニークな作品になりそうだ。山崎紘菜と上白石萌音がダブル主演する「スタートアップ・ガールズ」(来年公開)だ。若手女性起業家らを描く。実際に起業した経営者たちが企画の発信元であり、製作の出資ま…
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年末映画興行 ボヘミアン・ラブソディ&ファンタビが牽引
年末が近づき、映画興行に活気が戻ってきた。「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットに続いて、正月映画となる「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」が先週、爆発的なスタートを切ったのだ。今年の…
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3・11から7年…「Fukushima50」製作発表が意味すること
今年の日本映画界10大ニュースのひとつに入ると思う。2011年3月に起こった福島第1原発の事故を描く映画「Fukushima 50」(松竹、KADOKAWA配給)の製作が発表されたことである。待望久…
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「華氏119」期待はずれ? 伸び悩むM・ムーア監督の最新作
先の米国中間選挙に合わせて公開されたマイケル・ムーア監督の「華氏119」の興行が伸び悩んでいる。東京のメイン館は健闘だが、最終興収1億円ちょっとあたりか。2003年公開の「ボウリング・フォー・コロン…
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故・江波杏子さん 強いヒロイン像を打ち出したパイオニア
大ファンだった。先月27日に亡くなった俳優の江波杏子さんのことだ。この思いは60代、70代の男性なら分かってくれるだろう。20代の頃は、いまで言うクールビューティーの極致。エキゾチック(死語かもしれ…
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故三上真一郎さん 「乾いた湖」で岩下志麻の“初キス”を
俳優の三上真一郎さんが7月に亡くなっていたことを知り驚いた。享年77。このコラムで取り上げた三原葉子さん、高千穂ひづるさんもそうだったが、その逝去がマスコミでほとんど報道されない。お三方ともに忘れて…
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市川崑作に続く? 河瀬直美監督に求められる東京五輪映画
2020年に開催される東京五輪公式映画の監督に、「あん」などで知られる河瀬直美氏が抜擢された。これは意外だった。 宮崎駿監督や北野武監督らの名前も挙がっていたと思うが、結果的に河瀬監督がその…
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「止められるか、俺たちを」映画好きなフーテン女と若松組
17日は、若松孝二監督の6回目の命日だった。ついこの間のことのように感じるが、絶妙なタイミングである新作が公開されている。「止められるか、俺たちを」だ。1960年代末から70年代初頭にかけて、監督の…
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大杉漣さん主演作が盛況 映画「教誨師」に込められた思い
この2月に亡くなった大杉漣さん主演作の「教誨師(きょうかいし)」がヒットしている。6日の公開以降、都内の有楽町スバル座では満席の回も出ており、満面に笑みを浮かべて喜んでいるであろう大杉さんの姿が目に…
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盗作騒動も味方に 「カメ止め」興収25億円しぶとさの秘密
本欄でどこよりも早く、ヒット状況に触れた製作費約300万円の「カメラを止めるな!」。公開から3カ月が過ぎたが、いまだ週末興行ランキングの10位以内に入っている。興収は何と、ついに25億円を突破してし…
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日本映画産業の“縮図”「東京国際映画祭」を盛り上げるには
第31回東京国際映画祭のラインアップ発表記者会見が今週あった。国内最大の映画祭なので毎年注目している。今年は10月25日から開催される。終了した時点で総括を書くときもあるが、ひとつだけ、前もって注文…
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放つ言葉の重みと軽み…演技を超えた演技女優「樹木希林」
樹木希林さんが亡くなって、まもなく1週間が経つ。この間の報道の大きさに圧倒された。彼女が全く稀有な俳優だということが、広く認識されていたからだろう。美人女優として主役を張る映画やテレビの王道を歩んだ…
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「判決、ふたつの希望」 言葉の暴力と肉体的暴力への結論
映画とは、何と凄いものなんだろう。そんな感慨が素直に体に染みわたってくるのが、レバノン映画の「判決、ふたつの希望」だ。都内は1館だけの公開。これが連日満席に近い状況でヒットしている。客層は年配者中心…
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松田龍平が淡々と 映画「泣き虫しょったんの奇跡」で妙味
松田龍平という俳優には注目してきた。松田優作の息子だからという面もあるが、演技者としての個性が絶えず揺れている感じがあって気になるのである。父の呪縛を感じるときも多かった。 それは、ときに優…
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アイドルからスターへ 木村&二宮が光る「検察側の罪人」
木村拓哉と二宮和也が主演した「検察側の罪人」がヒットスタートを切った。最終で興収30億円も視野に入る。緊迫感あふれる力作だが、ストーリーとは別に感じたことがある。これは、まぎれもないスター映画である…
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日本映画界はさっぱりだが…粒ぞろいの単館系欧州戦争映画
今年の夏、日本発の戦争映画大作が公開されることはなかった。テレビではNHKスペシャルをはじめとして、力の入った戦争特集の番組が多く見応えがあった。なのに日本映画界ではさっぱりだ。戦争を題材にした作品…