著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

故・江波杏子さん 強いヒロイン像を打ち出したパイオニア

公開日: 更新日:

 大ファンだった。先月27日に亡くなった俳優の江波杏子さんのことだ。この思いは60代、70代の男性なら分かってくれるだろう。20代の頃は、いまで言うクールビューティーの極致。エキゾチック(死語かもしれない)な目元と肉感的な体つきは、まるでイタリア女優のようだった。しかも日本的な情感を漂わせていた。

 1960年代はじめのデビュー当時は不遇だった。透徹した美しさがちょっと近寄りがたくもあり、一般的な人気に広がらなかったのだろう。それでも、増村保造監督の「『女の小箱』より 夫が見た」(64年)など多くの作品で脇役ながら際立った存在感を見せていた。

 転機は「女の賭場」(66年)だ。手本引き賭博の胴師であった父が陰謀に巻き込まれて亡くなり、そのあとを引き継ぐことになる。女賭博師の誕生だ。この作品が大ヒットし、翌年から女賭博師シリーズが始まる。71年まで17本が作られた。

 江波さんは、このシリーズで日本映画のパイオニアの道を歩むことになった。男たちを相手にさまざまな難関を乗り越えていくヒロインものの道である。「入ります」と言って、札を着物の胸元に入れる。艶々した黒髪が匂いたち、少し吊り上がった鋭い眼光とピンクがかった唇が周りを睥睨(へいげい)し、ときに真っ白いもろ肌を見せたりする。「女賭博師」が切り開いた道は、「女の賭場」から2年後の藤純子(現・富司純子)の緋牡丹博徒シリーズにつながり、6年後の梶芽衣子の女囚さそりシリーズに引き継がれていく。

 今年驚いたのは、当欄でも触れた「娼年」という作品だ。70代の江波さんが、若い松坂桃李相手に実に官能的な演技を見せてくれた。江波さんは、最晩年でもパイオニアだったのだ。すばらしい女優人生だったと思う。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  2. 2

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  3. 3

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  4. 4

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  5. 5

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  1. 6

    萩原健一(6)美人で細身、しかもボイン…いしだあゆみにはショーケンが好む必須条件が揃っていた

  2. 7

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  3. 8

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  4. 9

    "日枝案件"木村拓哉主演「教場 劇場版」どうなる? 演者もロケ地も難航中でも"鶴の一声"でGo!

  5. 10

    “年収2億円以下”マツコ・デラックスが大女優の事務所に電撃移籍? 事務所社長の“使い込み疑惑”にショック

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    べた褒めしたベッツが知らない、佐々木朗希"裏の顔”…自己中ぶりにロッテの先輩右腕がブチ切れの過去!

  2. 2

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 3

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  4. 4

    巨人・田中将大“魔改造”は道険しく…他球団スコアラー「明らかに出力不足」「ローテ入りのイメージなし」

  5. 5

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  1. 6

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  2. 7

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…

  3. 8

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  4. 9

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  5. 10

    僕に激昂した闘将・星野監督はトレーナー室のドアを蹴破らんばかりの勢いで入ってきて…