「止められるか、俺たちを」映画好きなフーテン女と若松組
17日は、若松孝二監督の6回目の命日だった。ついこの間のことのように感じるが、絶妙なタイミングである新作が公開されている。「止められるか、俺たちを」だ。1960年代末から70年代初頭にかけて、監督の製作拠点であった若松プロダクションを舞台にした作品である。
本作は、若松監督のピンク映画時代の作品を見ている人とそうでない人では、印象がまるで違うだろう。当時の若松作品を支えた才人たち、足立正生、沖島勲、大和屋竺、小水一男、秋山道男、高間賢治、荒井晴彦らの名前を熟知している人は狂喜し、知らない人は「誰それ」ということになる。
製作側も先刻承知だ。だから本作の主人公は、監督をはじめとするスタッフたちの映画製作の動向をじっくり見ている無名の女性助監督なのである。映画好きなフーテンの若い女性が、体制、権力を相手に闘争本能をむき出しにする男集団に入ったら、いったいどうなるのか。彼女を主人公にしたことで、あることが見えてきた。
結局、若松孝二は謎だらけ、よくわからない人物だということだ。映画を見ない。本を読まない。商売上手。そんな男が、監督では天才的な力量を発揮する。監督含めた映画の謎が彼女を通して見えてくるのが何とも面白い。