酒をめぐる物語
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「美酒処ほろよい亭日本酒小説アンソロジー」前田珠子・桑原水菜ほか著
居酒屋で日本酒を飲むというのは、昭和の時代であればサラリーマンのおじさんと相場が決まっていたものだが、近年では「おちょこ女子」と呼ばれる日本酒好きの女性が増え、女子だけでテーブルを囲む居酒屋も珍しく…
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「月に捧ぐは清き酒――鴻池流事始」小前亮著
江戸時代以前の日本酒は基本的にどぶろくのような濁り酒が主流で、現在のような清酒が登場するのは戦国末期、案外新しい。清酒のルーツにはいくつかあるようだが、そのひとつが鴻池流で、清酒開発に取り組んだ酒造…
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「大店の暖簾下り酒一番」千野隆司著
江戸時代の文化の中心は京都や大坂で、その上方から江戸へ下ってきたものは「下りもの」として珍重されていた。対して「下らないもの」は、価値のないものということになる。その下りものの典型が「下り酒」で、こ…
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「居酒屋ぼったくり1」秋川滝美著
居酒屋というと、なんとなくほっこりした温かな感じがするが、最近の居酒屋のチェーン店ではタブレットでの注文のところも多く、いささか興ざめである。本書の舞台である居酒屋はそんなチェーン店とは真逆で、客の…
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「今夜、すべてのバーで」中島らも著
現在、日本では酒を飲む人の割合は以前に比べて減っているが、逆に多量飲酒者の数は増えており、アルコール依存症と疑われる人は300万人近くになっているという。 本書は15年前、52歳の若さで世を…
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「八百万の死にざま」ローレンス・ブロック著、田口俊樹訳
アル中の探偵という極めてユニークなキャラクターを生み出し、しかも35年という長きにわたるシリーズにまで仕立て上げたのが、ローレンス・ブロックの私立探偵マット・スカダー・シリーズだ。本書はシリーズ第5…
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「テロリストのパラソル」藤原伊織著
酒好きの探偵が主人公のミステリーはけっこう多い。というより、下戸の探偵というのはハードボイルドになりにくい。とはいえ、度を超してアル中にまでなるとキャラクターづくりがむずかしい。本書の主人公は手が震…
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「九つの殺人メルヘン」鯨統一郎著
バーを舞台にしたミステリーというと、ビール、ウイスキー、カクテルなどの洋酒が多いが、本書の舞台は渋谷区にある日本酒をワイングラスに注いで出す小じゃれた日本酒バー。しかも一話一話キーになる地酒が出てく…
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「ビール職人の醸造と推理」エリー・アレグザンダー著、越智睦訳
1994年の酒税法改正によって日本でもクラフトビール(地ビール)の製造が急増し、全国各地のご当地ビールが人気を博している。アメリカのシアトルの近くにある通称「ドイツ村」と呼ばれる小さな町、レブンワー…
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「太鼓叩きはなぜ笑う」鮎川哲也著
バーテンダーの仕事のひとつに、客との距離感をうまくとるというのがある。あまり出過ぎず、といって放っておきもせず、客が何か話したがっていそうなら、促して話に耳を傾ける。そのためには、カウンターの中から…
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「花の下にて春死なむ」北森鴻著
「とりあえずビール」というのは、日本の酒席の常套句だが、ひとつには最初はあまり強くない酒から入るというのがあるだろう。事実、日本のビールのほとんどはアルコール度数が5%前後だ。 ところが、世界…
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「麦酒の家の冒険」西澤保彦著
たとえば、目の前にたっぷりの缶ビールとキンキンに冷えたジョッキがあったとする。しかもさんざん歩き回ってのどが渇いている。しかし、そこは見ず知らずの他人の家で、住んでいる気配がない。金さえ払えば飲んで…
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「探偵はバーにいる」東直己著
酒の登場する小説は数あれど、本書の酒の描写は半端ない。冒頭、主人公の便利屋兼探偵の〈俺〉が根城にしている、札幌ススキノのバー「ケラー・オオハタ」で依頼人の話を聞きながら飲み、その帰りに寄ったカフェバ…
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「バー・スクウェアの邂逅」福田和代著
日本では、ウイスキーといえばスコッチ・ウイスキーが主流で、アイリッシュ・ウイスキーはややマイナーな存在だ。ハードボイルド好きなら、「鷲は舞い降りた」をはじめとするジャック・ヒギンズの作品によく登場す…
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「ようこそ、バー・ピノッキオへ」はらだみずき著
バーでの楽しみにカクテルがある。一口にカクテルといっても、その種類は3000ともいわれるほど、実にさまざま。名前にもそれぞれ由来がある。テキーラベースのマルガリータには、このカクテルを創作したバーテ…
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「BAR(バール)追分」伊吹有喜著
かつて、最初に口にするウイスキーといえばサントリーのレッドという時代があった。レッドに始まりホワイト↓角↓オールド↓リザーブと、少しずつ格を上げていくのがその当時のウイスキーのスタンダードな飲み方だ…
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「バー・リバーサイド」吉村喜彦著
レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」といえば、「ギムレットには早すぎる」というセリフが有名。それを言ったテリー・レノックスが探偵のフィリップ・マーロウに開けたてのバーの効用を説く場面がある。 …