そこに昭和がある旅
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大阪・西成の「釜ケ崎」と「てんのじ村」に漂う戦後の匂い
東梅田から谷町線に乗り、天王寺で下車した。改札口を出て階段を上がると女性が近寄って来た。「アソビニイコカ」。西成の昭和探しは刺激的に幕が開く。 「釜ケ崎」「ドヤ街」「ニコヨン」。この言葉を聞く…
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渋谷のラジカセ専門店で思い出す マイベストテープの記憶
近ごろめっきりCDジャケットを見なくなったと思ったら、なに? ダウンロード?音楽はデータで買う時代になったって。しかも1曲ずつじゃなく、月いくらの定額制で聴き放題、通称サブスクが人気だとか――なんて…
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賑やかさと悲しさが混在…昭和が色残る神戸三宮のガード下
私(78)と連れの漫画家(72)は阪神電車に乗り、三宮に向かっている。 「三宮」では他府県の旅行者が戸惑う。だから全国区の「神戸」を頭につけるようにした。阪神と阪急電車は駅名も車両も「神戸三宮…
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大正10年創業…浅草のプロマイド専門店でスターを懐かしむ
昭和の時代、お気に入りのアイドルの顔写真を手に入れる方法は、雑誌の切り抜きや「プロマイド」くらいだった。 プロマイドとは、写真の印画紙を意味するブロマイドから転じた和製英語。歴史は意外と古く…
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広島の幻のビールスタンド 氷式冷蔵庫と真鍮製サーバーで
日本初のビアホールが現在の東京・銀座8丁目にオープンしたのは1899(明治32)年。以来、終戦直後の休止期間を除けば、ビアホールは夏の庶民の渇いた喉を潤してきた。 昭和8年ごろに刊行された「…
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梅田からすぐ「困ったら福島」は大阪サラリーマンの合言葉
梅田の曽根崎警察署の前に立ち、右を見れば阪急、左を見れば阪神。この両巨大百貨店の真ん中の奥に、だだっ広い屋根。その下に大阪駅が見える。 「ビッグになったなあ。昔は汚い街やったのに」と連れの漫画…
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東武練馬・北町アーケードショッピングセンターの懐かしさ
関西が本場とされるアーケード商店街。しかし東京にもいくつか存在する。例えば品川区の「武蔵小山商店街パルム」や板橋区の「ハッピーロード大山商店街」などが有名だ。しかしどちらも現代風にアップデートされ(…
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ヤミ市がルーツ 門前仲町・辰巳新道の昭和横丁でハシゴ酒
飲み屋横丁=昭和のイメージがあるのは、その成り立ちに理由があるだろう。新宿西口の思い出横丁も池袋美久仁小路も戦後のヤミ市がルーツ。焼け野原の駅前に雨後のタケノコのように生まれた屋台が一区画にまとめら…
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ションベン横丁と小便小僧 大阪十三のキャバレーの思い出
「杭全」「十三」「放出」。テレビのクイズ番組になるほど大阪には読めない町(地)名がある。物知りの大阪のおばちゃんですら「わからん」と悩むくらいに。 私(78)と連れの漫画家(72)は夕刻迫る「…
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飯田橋と池袋「昔ながらの名画座」に流れるぜいたくな時間
こういう仕事をしていて恥ずかしいが、映画館にしばらく行っていなかった。いや、狭義には行っている。ただし、シネコンに。子どものお供でプリキュアやアナ雪に。つまり何が言いたいかというと、自分の見たい映画…
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大阪ミナミ「法善寺横丁」水掛不動尊は戦争も火事も免れた
法善寺横丁の石畳を歩くと、今もあの歌が聞こえるような気がする。 鼻から頭に抜けるような耳に心地いい声で歌う藤島桓夫の「月の法善寺横町」が世に出たのは1960(昭和35)年。60年も前の、あの…
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日本が最も活気づいていた時代に建てられた「東京タワー」
東京の昭和の象徴といえば「東京タワー」だろう。昭和33年12月23日開業。戦後復興を果たし、6年後には東京五輪が開催される、東京いや日本が最も活気づいていた時に建てられた、まさにシンボルだ。それは平…
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板橋「幸せな気分になる駄菓子屋」で40年前の自分と会った
いまでもふと夢に見る駄菓子屋の光景。買い食いができたのだから小学校高学年だろう。店番のおばあちゃんに小銭を渡し、好きな駄菓子を選ぶ。よっちゃんイカに粉ジュース、ヨーグルトという名の謎の白いクリーム状…
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かつて「民生食堂」だった両国の定食屋で自分好みの定食を
進学のために東京に出てきた数十年前、まだ都内には大衆食堂が幾つもあった。引っ越しも終え、田舎へ帰る母と一緒に入ったのも駅ガード下の大衆食堂。本当はもっと垢抜けた店に案内したかったが、そんな知識も勇気…
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番台のある明神湯(大田区)主人が丸太の薪を釜にくべる
昭和を代表するドラマといえば「時間ですよ」。下町の銭湯を舞台にしたコメディーで、昭和40年から平成2年までTBS系で放送。出演は森光子、堺正章、悠木千帆(樹木希林)ら。天地真理や浅田美代子の出世作だ…
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甘いミルクセーキは恋の味…「純喫茶の聖地」上野の風景
昭和の憩いの場といえば「純喫茶」。広辞苑には〈コーヒーや紅茶などを供する以外に特別のサービスをしない、普通の喫茶店〉とある。普通じゃないのはジャズ喫茶や歌声喫茶か。もともとは大正時代、酒を供して女給…
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「寅さんのいた風景」江戸川の土手と帝釈天に昭和を思う
年号は令和になり、昭和はひと昔どころか大昔になってしまった。懐かしい昭和の風景も、ますます消え失せていく。そんな貴重な「昭和」を探す旅――。第1回は「寅さんのいた風景」を訪ねてみた。 ◇ …