そこに昭和がある旅
-
親子2代続く氷屋(目白)氷柱を3本載せた父親のリヤカーを押して町内を回った少年時代
テレビ、洗濯機と並ぶ三種の神器のひとつ「電気冷蔵庫」が普及する以前は、氷式の冷蔵庫が一般的だった。氷は氷屋が各家庭に配達した。 「大きな氷柱を3本も載せた親父のリヤカーを、子ども時分はよく押し…
-
創設1932年の大多摩ハム(福生)は米軍基地の町に息づいているドイツ式伝統製法
地元のことは知っているようで知らないことも多いものだ。 筆者が住んでいる東京都福生市。米軍横田基地のおひざ元で、国道16号沿いの一部はアメリカ情緒を感じさせる。とはいえ、名物と言えばせいぜい…
-
阪神・真弓も来店…極楽亭主と上げマン女房が営む理容室
ちょっと下品な表現なので書きづらいが、こんな言葉がある。「上げマン」「下げマン」。肥後橋は京町堀の「ノボル理容室」のママ池田はる子さんは典型的な上げマン。 念のため広辞苑で「上げマン」を探し…
-
87歳の店主が語る 戦後の「プラモデル店」の変遷(池袋)
以前は模型を扱う店が町内に一軒はあったもんだが、近頃見かけなくなった。 シンナー臭い部屋で新聞紙を広げ、ニッパーをポチポチ鳴らすのは今どきはやらないのかもしれないけれど、かつてスケールモデル…
-
梅田で見つけた「昭和」瓦ぶきの屋根と木造りの桟の飲食店
半年ぶりに梅田を歩いた。有名な宝くじの店が阪神百貨店の東隣にあって、男が慌てて近寄ってきた。 「ここ、よう当たりまっせ」 美人の売り子が数人いるから張り切っている。店を守るガードマンだ…
-
池波正太郎も足を運んだ台湾デザートの専門店(上野桜木)
台東区の谷中あたりは昔から「寺町」と呼ばれる。 70を超す寺院が点在しているため、かつては彼岸や盆暮れになると、生花を手にした墓参りの人たちで賑わった。そんな人たちの休憩所という意味合いもあ…
-
堀江謙一がたまにやって来ては感慨に浸るヨットハーバー
桜が散って、つつじが咲いて。空が高くて、向こうにそびえる六甲連山は濃い緑……。 コロナを忘れる好天気。4月の末に「そこに昭和」を求めて小さな旅に出た。 「それ不要不急?」と隣保の未亡人…
-
ネギで知られる上信電鉄の終点を散策(群馬・下仁田)
先日、所用があって前橋へ出向いた。ただし、午前中は暇なので、どこかで時間を潰そうと思う。おあつらえ向きに「ぐんまワンデー世界遺産パス」なるフリー切符があり、これを使えば県内ならJRや私鉄でどこなりと…
-
大人のマニアが集うシャッター商店街のオモチャ屋(北区)
JR赤羽駅と都営三田線志村坂上駅のちょうど中間地点。陸軍施設跡に昭和29年から51年にかけて建設された桐ケ丘団地の広場部分に、昭和レトロな「桐ケ丘中央商店街」はある。 広場を取り囲むように店…
-
店内にポツンと座って…94歳女性が営む雀荘(神戸・三宮)
突然、旧知の人を思い出す夜がある。人が恋しい夜がある。 ふと、「母ちゃん」の顔を見たくなった。「今、どうしてるんやろ……」。思い立つと眠れなくなった。 「母ちゃんっ、ビールまだか?」「…
-
日暮里・創業99年の老舗佃煮屋 味を守る3代目店主の心意気
佃煮は江戸時代に保存食として考案されたといわれる。小魚、貝類、海藻類、豆類を、醤油や砂糖などを使って味付けしたもの。メシのおかずとしても重宝する佃煮を作り続けて100年になろうかという老舗が、JR日…
-
創業90年 薪で湯沸かす銭湯「新木川温泉」(大阪・十三)
生まれ故郷の大阪で一人暮らしをする父親に会いに出向き、家風呂がないから銭湯に行った。 「湯はええな」 目を細める親父の顔を見ると、湯か涙かわからない水が頬から落ちた。親父の背中を何年ぶ…
-
400円のコーヒー片手にクラシックを楽しむ要町の名曲喫茶
東京メトロで池袋の次の要町。地味といえば地味な駅で、近くで見るべきものといっても思いつかない。 しかし、駅前の大通りを外れて住宅街に入れば、道が複雑なこともあいまって、不意に独特の趣を醸し出…
-
「君の名は」ファンも列をなしたたこ焼き屋(大阪・天満)
昭和20年の東京大空襲下、偶然、銀座の数寄屋橋で出会った女(真知子)と男(春樹)が名も知らないまま離れ離れになり、二度と会うことはなかった。 作り話だが、NHKがラジオドラマ「君の名は」と題…
-
三ノ輪で80年続くパン屋の3代目店主がたどり着いた真骨頂
最後の都電、荒川線。さくらトラムとかいう愛称がつき、車両も新しくなったが、路面をのんびり走る姿には癒やされる。早稲田―三ノ輪橋間の全長12・2キロ。東の終点・三ノ輪橋駅を降りるとすぐあるのが、三の輪…
-
梅田と目と鼻の先の老舗商店街(大阪・中津)
梅田から阪急電車神戸線の普通(各駅停車)に乗ると、わずか1分? いや2分? くらいで「中津」に着く。改札口を出ると、目の前に広い公園がある。その公園を歩くと耳に心地いい歌が聞こえた。 ♪髪の…
-
戦前の都市計画が散見される常盤台住宅地(板橋)
「あちゃー、閉館か」。板橋区立中央図書館の貼り紙を見て肩を落とす。昭和45年開館の鉄筋コンクリート製の建物は質実剛健にできており、3階なぞズラリと閲覧席が並び、使い勝手はよかった。今どきのシャレた図書…
-
神田淡路町 いまも「ミルクホール」の暖簾を出す飲食店へ
「ミルクホール」といえば、明治時代に数多く出現した、文字通りミルク(牛乳)を主に飲ませる飲食店のこと。関東大震災以降は喫茶店に取って代わられたが、いまもレトロな雰囲気を演出するために、その名を冠する店…
-
壁には黒電話が…3代目中国人夫妻が営む芦屋の広東料理店
誰が言い始めたか、こんな世界一がある。 ▼住みたい家=アメリカ(広い。客室にもトイレ、シャワーがある) ▼食べたい料理=中華(四川、広東料理などすべてが絶品) ▼嫁にしたい女性=日…
-
浅草・銀座線直結の地下商店街 香港の雑居ビルを連想する
新型コロナウイルスの脅威が伝えられ始めて約1年。海外で見聞きしたことを主に扱うライターとしては、無聊な毎日が続いている。 ただ、国内で「この辺は、あの界隈に似ているな」と物思いに浸れる場所が…