検察vs政界 経済事件記者の検証記
-
【東京佐川急便事件】異聞(66)東京佐川事件に検察のメスが入れば、日本の旧弊構造が壊れる予感
16年ぶりの政治家逮捕となる元北海道・沖縄開発庁長官、阿部文男の収賄事件。それでも筆者は東京佐川急便事件の方がより重要事件だと考えていた。 検察が東京佐川の不正経理にメスを入れると、日本シス…
-
【東京佐川急便事件】異聞(65)「筋のいい」共和汚職事件は着手前から激しい報道合戦
元北海道・沖縄開発庁長官の衆院議員、阿部文男に対する東京地検特捜部の強制捜査は、通常国会が開会する前の1992年1月中旬着手と見込まれた。91年12月になると、マスコミ各社の報道合戦が激しくなった。…
-
【東京佐川急便事件】異聞(64)国会議員「不逮捕特権」の壁…許諾請求での捜査情報漏れを恐れる検察
検察が贈賄側を逮捕しながら収賄側の政治家については在宅取り調べだけで起訴するとなると、野党やマスコミの一部には、検察が政治家に忖度して逮捕を見送ったのではないか、との受け止めも出てくる。 し…
-
【東京佐川急便事件】異聞(63)検察首脳の「政治家在宅起訴」判断の理由
収賄罪の嫌疑がかかった政治家を在宅で起訴してきたのは、それらの事件を摘発した時の検察首脳らの判断だった。彼らは、贈賄側の証拠が固く、収賄側が否定しても公判維持に必要な証拠がそろっているのなら、政治家…
-
【東京佐川急便事件】異聞(62)「16年ぶりの国会議員逮捕か」と盛り上がる記者たち
重要閣僚や政権与党の要職を歴任した宮沢喜一は、政治が検察の捜査に介入する危険を重々、承知していた。 法と証拠に基づいて行動する検察を政治の側がコントロールすることはできないし、また、してはい…
-
【東京佐川急便事件】異聞(61)驚いたのは「加藤紘一君は大丈夫ですか」と聞かれたことだった
宮沢喜一とは派閥の事務所で会った。夕暮れ時。あわただしく人が出入りしていた。正確な日時の記録はないが、総裁選での当選が決まった後だったと記憶する。いずれにしろ組閣前だ。選出された興奮の余韻か、宮沢の…
-
【東京佐川急便事件】異聞(60)宮沢への取材のつなぎを頼んだ「永田町のフィクサー」
社会部の事件記者である筆者が、縁もゆかりもない首相候補の有力政治家に直接取材するのは困難だった。宮沢喜一への取材のつなぎ、あるいは、阿部文男を閣僚に登用するかどうかの宮沢の意向確認は、日常的に宮沢と…
-
【東京佐川急便事件】異聞(59)政治家の取材対応に見る政治部と社会部の落差
政権与党の派閥の領袖にして日本の政治権力のトップである総理大臣の最有力候補である宮沢喜一は、自民党の国対関係議員や法務官僚、政治部記者などのネットワークで検察が阿部文男に肉薄しつつある情報は当然、耳…
-
【東京佐川急便事件】異聞(58)検察の意を伝えるだけの伝書鳩の役回りはご免だった
阿部文男の事件に戻る。阿部事件の捜査を指揮する検察幹部は、次期首相の宮沢喜一が組閣に当たり論功行賞で派閥事務総長の阿部を閣僚に起用すると厄介だ、と考えていた。仮に、検察の捜査内容をよく知らないまま起…
-
【東京佐川急便事件】異聞(57)国務大臣の不訴追特典と鳩山由紀夫のケース
東京地検特捜部は、宮沢派事務総長の阿部文男が鉄骨加工会社「共和」側からの収賄容疑を素直に認める可能性は低いとみていた。否認すれば、容疑固めのため、ロッキード事件で田中角栄らを逮捕して以来の政治家逮捕…
-
【東京佐川急便事件】異聞(56)「阿部を大臣にしないよう宮沢さんに注意を」との検察幹部のお願い
退陣表明した首相、海部俊樹の後継として、自民党最大派閥の経世会(竹下派)会長の金丸信らは総理・総裁候補として会長代行の小沢一郎の擁立を目指した。しかし、小沢は「心の準備ができていない」と固辞。そのた…
-
【東京佐川急便事件】異聞(55)「事件の筋」がよかった宮沢派事務総長・阿部文男の収賄容疑
倒産した鉄骨加工会社「共和」の巨額の使途不明金について特捜検事らは、公共事業をめぐる贈賄工作に充てたのではないか、と疑った。理由は、同社の元副社長、森口五郎が1991年4月、青森地裁で、青森県三沢市…
-
【東京佐川急便事件】異聞(54)東京佐川事件と同時並行で進んだ共和汚職事件の捜査
東京地検特捜部は東京佐川急便事件と並行してもうひとつ、重要な事件を捜査していた。自民党宮沢派事務総長の衆院議員、阿部文男(旧北海道3区)の収賄事件である。 阿部が北海道・沖縄開発庁長官在職中…
-
【東京佐川急便事件】異聞(53)元法相の谷川和穂を直撃、拍子抜けするほどあっさり事実関係を認めた
元法相の谷川和穂が連帯保証人の一人になり、東京佐川急便から平和堂不動産経由で仕手筋の誠備グループ・加藤暠側に貸し付けられた100億円。 加藤に対する融資契約は半年間とされていたが加藤側に内部…
-
【東京佐川急便事件】異聞(52)東京佐川から「誠備」加藤暠側への100億円融資
平和堂不動産社長に対する取材は、特捜部の任意の取り調べが始まってからも続いた。 「検察の調査は進んでいない。呼ばれているのは俺だけ」(1991年12月中旬) 「不動産取引でキックバックが…
-
【東京佐川急便事件】異聞(51)「渡辺さんは政治家に金をあげるのが好きなんだ。メリットは何もない」
東京佐川急便元社長、渡辺広康側近の平和堂不動産社長の証言は続く。 東京地検特捜部の捜査記録が平和堂不動産社長の最後の仕手戦と認定した群栄化学工業株の売買。社長は、同株の取引を勧めた最大手の住…
-
【東京佐川急便事件】異聞(50)東京佐川の渡辺社長に心酔した平和堂不動産社長の弁明
平和堂不動産社長への取材を取り次いでくれたのは、社長にサンフランシスコの土地売買を仲介した先の不動産ブローカーだった。 1991年10月中旬、ブローカーに伴われ、東京・青山の平和堂不動産社長…
-
【東京佐川急便事件】異聞(49)東京佐川事件の捜査着手を控え、関係者に直当たり
1991年秋。東京地検特捜部の東京佐川急便事件の捜査方針は固まりつつあった。強制捜査の着手は翌92年の2月ごろと想定された。それまでに、できるだけ事件関係者の取材をしておかねばならなかった。逮捕・勾…
-
【東京佐川急便事件】異聞(48)富士銀事件の派生疑惑で松岡利勝代議士を取材
衆院議員・松岡利勝(熊本1区)の献金疑惑取材の仲介をしてくれたのは、その大手百貨店の秘書課長だった。1991年11月のことだ。 松岡は、富士銀赤坂支店元渉外課長の不正融資先のリゾート開発会社…
-
【東京佐川急便事件】異聞(47)百貨店秘書課長の仲間の大蔵官僚に持ち上がった株取引疑惑
大手百貨店秘書課長と親密な関係にあった大蔵省キャリア官僚の銀行・証券の口座の取引記録を捜査関係者から入手したのは、ちょうどそのころだ。 キャリアは連日のように頻繁に株取引を行い、100万円単…