検察vs政界 経済事件記者の検証記
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【東京佐川急便事件】異聞(26)佐川急便グループの中核・東京佐川に照準
さて、本論の東京佐川急便事件の捜査。 東京地検特捜部が渡辺広康ら東京佐川の経営陣に捜査の照準を合わせたのは、1991年3月に摘発した小谷光浩の蛇の目ミシン工業に対する300億円恐喝事件の捜査…
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【東京佐川急便事件】異聞(25)東急電鉄株買い占め、東急側に接触した組長に会えたが…
石井進の東急電鉄株買い占め疑惑の話に戻る。 東急電鉄側と接触し株の引き取りを求めた石井直系の組長に取材する必要があった。連絡方法もわからないので、まず、その組長の親分筋に当たる稲川会の有力幹…
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【東京佐川急便事件】異聞(24)特捜部は大きな魚を逃がした?
この野村証券の相場操縦などの疑惑に関する捜査には後日談がある。 6年後の97年3月下旬、東京地検特捜部は野村証券の総会屋に対する利益供与事件の捜査の過程で同証券の「VIP口座」を押収した。V…
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【東京佐川急便事件】異聞(23)中途半端で終わった東急電鉄株買い占め疑惑捜査
石井進の東急電鉄株買い占めをめぐっては、1991年7月、野村証券の内幕を描いた「ザ・ハウス・オブ・ノムラ」の著者アル・アレツハウザーが、同証券による同電鉄株の集中売買は相場操縦の疑いがあるとして同証…
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【東京佐川急便事件】異聞(22)警視庁捜査4課担当時代に石井進とニアミスの経験
毎日新聞時代の1983年秋から85年春まで1年半弱、警視庁詰め記者として捜査2課と4課を担当した。捜査2課はホワイトカラーの知能犯、捜査4課は暴力団・総会屋など反社会的勢力の事件を主に扱う。 …
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【東京佐川急便事件】異聞(21)暴力団取材を敬遠してきた理由
ここまでバブル期を代表する経済ヤクザ、暴力団稲川会最高幹部の石井進について縷々語ってきたが、筆者は暴力団を深く知っているわけではない。いや、ほとんど知らないと言った方が正確だ。 経済事件を取…
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【東京佐川急便事件】異聞(20)赤プリで開かれた石井進、渡辺広康、佐藤茂のトップ会談
読売新聞の記事で追いつめられた稲川会会長の石井進は90年5月、北東開発・北祥産業の破綻回避のため、川崎定徳の佐藤茂から50億円の融資枠を取り付け、佐藤の影響下にあるノンバンクから同年10月までに計5…
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【東京佐川急便事件】異聞(19)読売新聞の記事で追い詰められた東京佐川と石井進
そうした中、一本の新聞記事が事態を大きく動かす。1990年3月24日の読売新聞夕刊記事だ。 「【アンダーカレント】暴力団、株で太る 利益数億も氷山の一角」は、「広域暴力団、稲川会や山口組の幹部…
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【東京佐川急便事件】異聞(18)石井進と小谷光浩 東急電鉄株買い占めの誤算
捜査資料によると、東急電鉄株買い占め騒動のきっかけは、東急電鉄会長で東急グループ総帥の五島昇が1989年3月20日に死去したことだった。 小谷光浩は、85年に仕手グループのビデオセラーが買い…
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【東京佐川急便事件】異聞(17)集めた394億円を「株で一勝負」と考えた石井進
ゴルフ場の会員資格保証金として石井進サイドが1989年8月までに集めたのは394億円──。前回に続き、捜査資料に記された内訳を再度、掲載する。 ▽東京佐川急便80億 ▽安達建之助(エメラルド…
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【東京佐川急便事件】異聞(16)佐川清も東京佐川のゴルフ場開発支援を了解した
東京佐川の保証による北東開発・北祥産業などの借入額は1988年1月末で約417億円を超えた。そのため東京佐川社長の渡辺広康は同年4月、稲川会会長の石井進を佐川急便グループトップの佐川清に引き合わせた…
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【東京佐川急便事件】異聞(15)女性スキャンダル告発封じで借りができた渡辺広康社長
捜査資料によると、東京佐川急便社長の渡辺広康が稲川会会長の石井進に取り込まれるきっかけは、渡辺の女性関係をめぐるトラブル処理だった。 渡辺は親しくしていた銀座のクラブホステスが韓国に帰ること…
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【東京佐川急便事件】異聞(14)経済ヤクザの稲川会会長は東京佐川急便を“金づる”に狙った
東京地検特捜部は、小谷光浩の光進事件捜査で、表社会と裏社会の人脈が織りなす経済事件の金鉱脈を掘り当てた。特捜部の主任検事だった佐渡賢一はのちに、当時の捜査状況を「『筋目』に入った」と表現した。 …
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【東京佐川急便事件】異聞(13)毎日新聞への提訴を突然取り下げた三塚博
しばらくして、一連の記事を書いた毎日新聞記者から連絡があり、会った。会社は別になっても大事な友人であることに変わりはない。訴訟対策について非公式に相談を受けた。 その内容は明らかにできないが…
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【東京佐川急便事件】異聞(12)毎日新聞が報じた「三塚氏に3億円」のスキャンダル
「田中さん、どうなってるの。こんなややこしい話、乗れないよ」 筆者に詰問された田中森一は困った顔をした。安倍晋太郎の金庫番秘書が助け舟を出した。 「三塚をやっつけるために、みんなでテーマ…
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【東京佐川急便事件】異聞(11)田中森一に連れていかれた加藤六月事務所には大物秘書や会社経営者が
一般に、企業や政党などの内紛絡みの情報は、政治的謀略や利権などのバイアスがかかっていることが多い。つまり筋悪。ただ、三塚博は政権与党の派閥の領袖だ。その闇献金スキャンダルは、筋が悪かろうが、裏付けが…
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【東京佐川急便事件】異聞(10)距離を置いていた田中森一から持ち込まれたスキャンダル情報
東京地検特捜部時代の田中森一は弁護士開業に向け「顧客」開拓にいそしんでいた。捜査対象でもないのに、田中角栄の「刎頚の友」でロッキード事件で逮捕された国際興業オーナーの小佐野賢治に会いに行き、「一代で…
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【東京佐川急便事件】(9)検察は三菱グループに忖度して事件を葬ったのか
三菱重工は、高度成長期の日本経済を牽引した「重厚長大産業」の代名詞だった。産業構造の変化で次第に肩身が狭くなりつつあったとはいえ、日本最大の企業集団、三菱グループの中核企業だった。 三菱グル…
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【東京佐川急便事件】(8)まっとうな検察幹部がなぜ「三菱重工CB事件」の捜査を止めたのか
捜査を止められた検事の田中森一が怒りをあらわにした「三菱重工CB事件」──。 捜査に協力していた筆者のショックも大きかった。事件をボツにした東京地検の決裁ラインの検察幹部の多くは、当時の法務…
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【東京佐川急便事件】異聞(7)三菱重工CB事件 検察上層部に捜査を止められたウラ側
検事時代の田中森一は1987年に、東京で2つ、大きな事件の捜査を手掛けた。ひとつは値上がりが確実とされた三菱重工の転換社債(CB)を割り当てられた国会議員や総会屋などが高値で売り抜けて、ぼろ儲けした…