「段取りの“段”はどこの“段”?」 荒田雅之、大和ハウス工業総合技術研究所著
縄張り、縁を切る、叩き上げ、間尺に合わない、堂に入る、てこ入れ……これらに共通するのは、いずれも住まいに関わる言葉だということ。普段は気づかないが、住まいや建築関係に由来する言葉は案外に多い。本書は、51の住まいに関わる言葉を取り上げて、「その意味や語源、使われ方の変遷を追い、時に蘊蓄を傾け、専門的知識も網羅した」もの。
タイトルにある「段取り」も建築用語で、傾斜地に石段を造成するときに、坂の勾配を見て、石段を何段に設定するかの寸法取りを「段を取る」といったことに由来し、その石段の出来、不出来を評価するに際して「段取りが良い、悪い」というようになったのだという。同様に、「棚上げ」の「棚」、「几帳面」の「面」、「羽目をはずす」の「羽目」、「埒があかない」の「埒」などがもともとは何を指すのか、そしてなぜ現在使われているような意味になったのかが解き明かされる。まさに「目から鱗」の蘊蓄が満載。これに倣って、乗り物、食べ物、動物などに関わる身近な言葉に潜んでいるナゾを探ってみるのも一興。(新潮社 700円+税)