「ぼくらの民主主義なんだぜ」高橋源一郎著
朝日新聞で連載中の「論壇時評」の4年分をまとめたもの。小説家である著者が時評を開始したのは東日本大震災が起こった翌月の2011年4月。その第1回は放射能汚染を恐れて「疎開」する母子の情景から始め、テレビや新聞のみならずネットなどあらゆる場所で「震災と原発」をめぐることばがあふれている現在、この国のあらゆる場所が「論壇」となったとする。そして、この災禍を前に、壊滅した町並みだけでなく、人びとをつなぐことばもまた「復興」されなければならないと締めくくられる。
その後も、マンガ、ラジオ、映画、ツイッター等々、従来の総合雑誌を中心にした「論壇」とは異なる分野の言説を積極的に取り上げて、「震災以後」の思考とことばのありさまを論じていく。そのキーワードが「民主主義」だ。手垢にまみれた「民主主義」ということばをどうやって新たに意味づけることができるのか。そう問い続けられている。
民主主義を支える立憲主義も侵されつつある現在、4年間でこの国に何が起こったのか、本書で検証することが必須だ。
(朝日新聞出版 780円+税)