「君の膵臓をたべたい」住野よる著
人に興味がなく本ばかり読んでいる高校生の<僕>は、盲腸の術後の抜糸のために行った病院で、「共病文庫」と手書きで書かれている一冊の本を拾う。開いてみると、それは膵臓の病気で死が近い人が書いている日々の記録で、その書き手は人気者のクラスメートの山内桜良だった。
桜良の秘密を知ってしまった<僕>は、今まで全く縁のなかった桜良に秘密を他言しないことを約束させられただけでなく、誘われるままあちこち連れ回される。常に人に囲まれる桜良と孤独で影の薄い<僕>のコンビの奇妙さに、周囲のクラスメートは驚き、ついに<僕>のストーカー説まで出回るほどになる。そして秘密を共有したふたりには、予想していたものとは別の結末が待っていた……。
著者は、「小説家になろう」という小説投稿サイトで本作が話題となり、異色のデビューを果たした新人作家。衝撃的なタイトルもさることながら、人が人を必要とする意味を読み手に考えさせる温かな読後感が共感を呼び、初版3万部から累計7万部に達した。新人作家の文芸書としては異例のヒットを記録している。