「卜伝飄々」風野真知雄著
剣聖・塚原卜伝は、彼と立ち合って名を上げたいと考えるやからや、彼を敵と狙うやからにやたらと襲われる。あるとき、同じ渡し舟に乗った若い男が後をつけてくるのに気づいた。その男、五助は卜伝が斬り殺した男の巾着や着物を奪っている。「そういうことだったか」と声をかけると、五助は「私に似た生き物が南蛮にいるそうです」と自嘲する。狐に似たその生き物の名はハイエナだ。卜伝を襲って敗れた男の持ち物を五助が探っていたら、最後の力を振り絞って五助に斬りかかったが、彼は軽やかにそれをかわした。卜伝はそれを見て、新しい剣技を思いつく。〈南蛮狐〉
飄々とした8編の剣豪小説。(文藝春秋 1550円+税)