自らの選択を肯定することが幸せに
「僕らは生きる場所を選べる。」WYP 1500円+税
今、デンマークが熱い。
玩具のレゴやチボリ公園は以前から有名だが、今や「世界でもっとも幸福な国」として注目を浴びる。税金は高いが、社会的にも平等で階層がほとんどなく「アメリカよりもアメリカンドリームを実現しやすい国」とされ、創造的で変革に富む企業競争力の高い国として知られる。
夏休みはしっかり5週間取り、日本よりもずっと平均労働時間が短いが、労働者1人・単位時間当たりの国内総生産(GDP)は日本の倍以上と生産性の高い社会だ。原発は40年前に国民的な議論で拒否し、住民所有の風力発電などで自然エネルギーが7割近くに達している自然エネルギーの先駆者であり先進国でもある。
本書はその「謎」にインタビューで迫る。「デンマークに暮らす8人の人生から、これからの生き方を考える旅」と副題にあり、クールな雑誌の編集長、140人で共同体生活を送っている住民、カフェやショップのオーナー、2つの家族たちという、それぞれの物語に混じって、3人の日本人も登場する。世界一刺激的なビジネススクール「カオスパイロット」の学生、「風のがっこう」の創立者、ホイスコーレ(民衆高等学校)の教師だ。
8人との会話を読み進むと、「自由に満ちたデンマークで幸せになれる方法は、自らの選択を肯定すること」とのくだりに出くわす。確かにそうなのだ。エネルギー政策でも他の社会政策でも、みんなで対話を重ねながら、自然と科学と人間社会の道理が通じる当たり前のことを当たり前に選択してきた社会なのだ。
本書を読むと、日本に居たままデンマークを旅し彼らに出会い会話しているかのようだ。日本で息苦しさや行き詰まりを感じている人は、ひょっとすると、その「会話」を通して、これからの生き方が見えてくるかもしれない。