「昭和少年少女 ときめき図鑑」市橋芳則、伊藤明良著
明年、新天皇が即位して、元号が変わると、昭和がさらに遠くなる。愛知県にある「北名古屋市歴史民俗資料館」は、「昭和日常博物館」の別名を持ち、その昭和の時代のごくありふれた日常生活で使用された品々を収集・展示しているという。「それらのものの周辺に起こった細かな事象などまでつぶさに集めることによって、当時の暮らしを再現」していこうと試みる、昭和生まれにはたまらない博物館なのだ。
本書は、同館のコレクションを紹介しながら、昭和の中でも変化の激しかった戦後から高度成長期、さらにはバブル時代へと向かう時期の人々の暮らしを少年少女の視点でのぞいていく。
最初に紹介されるのは、生後100日前後に行われる赤ちゃんの通過儀礼「お食い初め」に使われる膳のセットだ。
古くは漆器の一式揃いだが、昭和30年代になるとプラスチック製品が登場。各時代の食器に、お食い初めのために用意された食膳などの写真も添えられる。
以後、歩く練習に使った「カタカタ」と呼ばれる手押し車など、子供の成長に合わせてさまざまな品が紹介される。
かるたのように文字と絵が描かれた文字遊び用の積み木は、作られた時代によって採用されている絵柄と言葉が変化している。「て」の積み木を比べてみると、戦前・戦中は「テツカブト」、戦後は「テング」、そして昭和30年代になると「てれび。てれびじょん」と時代を見事に反映している。
巻き玉の火薬を装填するブリキ製のピストルや、メンコが入った宝箱、野球盤などのボードゲーム、そして思春期に読んだ雑誌類やソノシート、粉末ジュースやドロップの缶、飲料の容器など。眺めているだけで忘れていた子供時代の記憶が鮮明によみがえってくる。
(河出書房新社 1850円+税)