「大江戸の飯と酒と女」安藤優一郎著
バラエティーに富んだ江戸時代の飲食文化を紹介しながら、その大量消費を可能にした当時の産業経済構造についても解説する歴史エッセー。
江戸の武士の多くは、藩主の江戸在府中だけ国元から単身で出府する勤番侍だった。彼らが書き残した日記を読むと、非番の日には頻繁に江戸見物に出掛け、食べ歩きを楽しんでいたことが分かる。当時、そば屋だけでも5000軒を超えていたというが、そば粉が行き渡ったのは、産地の農民が水車を活用して、製粉まで済ませて出荷するようになったからだという。また食用油も水車によって大量に搾られるようになり、天ぷらが低価格で提供されるようになった。そうした食の舞台裏に始まり、酒文化や男女の色恋まで、江戸っ子たちの日常に迫る。
(朝日新聞出版 810円+税)