「実像」秋山千佳著
中本忠子は非行少年などの更生支援をする保護司を76歳まで務めた。広島市基町のアパートには、親が薬物依存症だったり刑務所を出たり入ったりで、虐待やネグレクトを受けてきた子どもが、「ばっちゃん、腹減ったー」とやってくる。そんな彼らに、忠子は盆も正月もなく食事を作って食べさせる。「よその子に与えることによって、うちの子にも誰かが与えてくれるじゃろう」という思いがあった。
忠子は20歳で結婚したが、夫が心筋梗塞で突然死し、2人の息子を実家に預けて再婚した。その後、3人目の息子を産んだが、離婚して母子2人で生きてきたという過去があったのだ。「広島のマザー・テレサ」の謎に包まれた人生を探るルポルタージュ。
(KADOKAWA 1700円+税)