「蝦夷太平記 十三の海鳴り」安部龍太郎著
蝦夷管領、安藤又三郎季長の三男、新九郎季兼は、船で出羽に向かった。出羽で反乱が起き、異母兄の季治が殺されたため、父に鎮圧を命じられたのだ。能代館の役人は出羽アイヌと交易を行っていたが、役人が無体なことを押しつけたため、一揆が起きたという。
十三湊を北条得宗家から預かる季長のいとこ、季久が新九郎を出迎え、日本と朝鮮半島、大陸を描いた地図を見せた。新九郎は初めて地図を見て、自分が命がけで往復している十三湊と若狭の距離が、地図では「たったこれだけ」の距離でしかないことを知った。やがて新九郎は一揆の首謀者が季久であることに気づく。鎌倉末期に奥州でアイヌと力を合わせて生きる道を切り開く武士を描く時代小説。
(集英社 2000円+税)