「国境の北と日本人」藤巻光浩著
10年前の夏、著者はサハリンに行った。中国や韓国などの友人と日本の植民地支配について議論したりしていたので、植民地支配の痕跡を自分の目で見ておきたかったのだ。
ユジノサハリンスクで買った地図は今まで見ていた地図を逆さまにしたもので、アイヌやヴィルタなど北の先住民族の交易圏、生活圏が記されていた。日本の教育では彼らの交易には触れず、絶滅を待つ存在というイメージを刷り込むだけだ。 サハリン郷土博物館で声をかけてきたのは、梁さんというロシア人。彼は朝鮮半島出身の二重徴用炭坑夫の息子で、終戦時に日本に帰還するためのバスに乗せてもらえず、ロシアに取り残されたのだ。(第1章)
「日本」と「日本人」が見えてくるサハリン紀行。
(緑風出版 2000円+税)