「モーツァルトは『アマデウス』ではない」石井宏著
大ヒット映画の恩恵でモーツァルトの名前は「アマデウス」だと世界中の誰もが知っている。多くの資料にもそう記されているが、著者は生前のモーツァルトの名前はアマデウスであったこともないし、そう呼ばれたことも、自らがそう名乗ったこともないと断言する。
モーツァルトは、1770年以降、親がくれたヴォルフガングという名に、イタリア人が彼を称賛して呼んだ「アマデーオ」という名前をつけて署名するようになった。アマデーオをドイツ語に直せば、アマデーウスにならないこともないが、ドイツ語も使えたモーツァルトは一度もアマデーウスと署名したことはない。なぜ彼がアマデーオという名を愛し、生涯に使い続けたのか。その足跡をたどり解き明かす音楽エッセー。
(集英社 880円+税)