「ドナルド・キーンのオペラへようこそ!」ドナルド・キーン著
キーンはコロンビア大学3年生のとき、比較文学を専攻して「源氏物語」と出合った。それは戦争も殺人もなく、登場人物が「愛」と「美」を追求するために生きる世界だった。光源氏は多くの愛人を持つ魅力的な男性で、モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」の主人公に似ている。
だが、ドン・ジョヴァンニの関心事は女性を我が物にすることで、用済みとなった女性を侮蔑する。それに対して光源氏は、女性たちが一番喜ぶような方法で愛を示す。両者は両極端の存在なのだ。その違いを知ったとき、キーンの中に日本文学・文化に対する関心と愛情が生まれた。
キーンの、日本とオペラへの愛が詰まった一冊。
(文藝春秋 2000円+税)