「虚構の森」 田中淳夫著
森林は、気候変動対策の切り札とされ、伐採や火災による森林面積の減少が危惧されてきた。
ところが、著名科学誌に掲載された論文によると、この35年間で地球上の森林は7%、日本の国土の6倍以上にあたる224万平方キロメートルも増えているという。
また、植物は光合成もするが呼吸によって酸素を吸収して二酸化炭素を放出もしている。さらに、森林に生息するキノコやカビなどの菌類が、有機物を分解し、二酸化炭素を排出しており、森林全体で見ると二酸化炭素と酸素の差し引きはプラスマイナスゼロだそうだ。
本書は、こうした誰もが抱いているステレオタイプの「環境・森林を巡る常識」に異論を申し立て、検証を試みたテキスト。
他にも、森林が洪水・渇水・山崩れを防いでいるや、森こそが生物多様性を支える存在である、除草剤は生態系を狂わすなど、常識のバイアスに曇った目を見開かせてくれる衝撃本。
(新泉社 2200円)