「格差の自動化」 ヴァージニア・ユーバンクス著 ウォルシュあゆみ訳 堤未果解説
アメリカでは、世界的金融不況以降、増大した経済不安と並行して、予測アルゴリズム、リスクモデル、自動審査システムなど、高度なデータベース技術の使用がさまざまな場面で急速に拡大していった。
こうしたデジタル化による資格や適性の決定の自動化が公共サービスにも導入され、社会のセーフティーネットを破壊し、貧しい人々を犯罪者として扱い、差別を助長している実態を告発する警世の書。
インディアナ州の福祉制度の受給資格判定の自動化、ロサンゼルスのホームレス向けの電子登録システム、そしてペンシルベニア州アルゲニー郡が採用した児童虐待や育児放棄の犠牲者を予測するリスク予測モデルなどの現場を取材。
公平であるはずのシステムが差別を助長している背景には、福祉を憲法で保障された個人の「権利」ではなく、かつて19世紀に社会問題化した「救貧院」と同じく、「施し」と捉える優生思想がデジタル技術によってふたたび息を吹き返していると警告する。
(人文書院 3080円)