「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?」 カトリーン・マルサル著 高橋璃子訳

公開日: 更新日:

 1776年に経済学の父アダム・スミスが提唱して以来、経済を動かしているのは「利益を追求」する人々の利己心だとされてきた。そこには、生涯独身で彼の身の回りの世話をしてきた母親の「家庭内労働」は考慮されていない。子どもを産み育てることも、家族に食事を作ることも、経済発展には欠かせないが、GDP(国内総生産)にはカウントされてこなかった。一方で前世紀半ばから多くの女性が社会に進出したが、女性の賃金はいまだに男性よりも低く、上級管理職の数も少ない。

 それは私たちの働き方や考え方が、人間は理性に基づいて行動し不必要なことはしない「経済人(ホモ・エコノミクス)」であるという誤った考え方に立っているからではないか。

 この経済人に象徴される経済学の考え方に疑問を呈し、市場経済の外にあるモノを含めて社会全体がどう維持・運営されているのかを考える「フェミニスト経済学」の視点から未来の経済モデルを考察したテキスト。

(河出書房新社 2310円)

【連載】コロナ後に始まるSDGsなライフスタイル本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  2. 2

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  3. 3

    【独自】亀山千広BSフジ社長“台風夜のお色気ホムパ疑惑” 「帰宅指示」を出しながら自分はハイヤーで…

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希 160キロ封印で苦肉の「ごまかし投球」…球速と制球は両立できず

  5. 5

    ヤクルト村上宗隆 復帰初戦で故障再発は“人災”か…「あれ」が誘発させた可能性

  1. 6

    明暗分けたメジャーの最新評価…ヤクルト村上宗隆「暴落」、巨人岡本和真は「うなぎ上り」

  2. 7

    中森明菜「奇跡」とも称された復活ステージまでの心技体 「初心を忘れるな」恩師の教え今も…

  3. 8

    フジの朝ワイド「サン!シャイン」8時14分開始の奇策も…テレ朝「モーニングショー」に一蹴され大惨敗

  4. 9

    石橋貴明のセクハラに芸能界のドンが一喝の過去…フジも「みなさんのおかげです」“保毛尾田保毛男”で一緒に悪ノリ

  5. 10

    セレブママの心をくすぐる幼稚舎の“おしゃれパワー” 早実初等部とアクセスや環境は大差ナシ