ニッポンEV事情
「EVガラパゴス」船瀬俊介著
ますます本格化するEV(電気自動車)時代。しかし、日本メーカーは大きく出遅れているという声がしきり。新たなニッポン沈没か?!
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「ガラパゴス」はいまやニッポン国家の代名詞。高度成長時代から世界ナンバーワンを目指してひた走ってきたはずなのに、気が付けば周りにかつてのライバルの姿はない。
彼らはいつの間にか、よそのアリーナで競争を繰り広げ、ニッポンだけが別の島でひとり低成長と少子化に悩んでいるのだ。
日本消費者連盟の職員としてバブル期の前から市場の移り変わりを見てきたベテラン評論家の著者もズバリ、「周回遅れの日本自動車産業に明日はない」と断言する。アメリカの投資顧問会社が発表した2040年の予測では、トヨタの売り上げは「現在の1100万台から350万台に激減」というのだ。ハイブリッド車(HV)の時代に日本勢はトップだったが、発電にガソリンを使うHVは今後は禁止。それゆえ前出の予測でもトヨタの世界シェアは11%から4.3%に激減するだろうという。他方、テスラの躍進は周知だが、この予測でも1位は独フォルクスワーゲンだ。つまり勝ち抜く自動車企業もあるわけだ。
著者はこれまでにもEV開発に関わった国内の個人や企業に取材。そして、目先の利益や需給にとらわれ、有望な開発企画などに投資を渋る近視眼的で内向きの企業体質を指摘する。終盤では「完全EV化は、正解でない」とする豊田章男トヨタ社長の主張を検証し、「重大な嘘」と告発している。
(ビジネス社 1980円)
「Apple Car デジタル覇者VS自動車巨人」日本経済新聞・日経クロステック合同取材班著
トヨタの例にみられるようにEV時代には、かつての自動車企業の優位が通用しないのは明らか。テスラなど実績ゼロからのベンチャーだが、もっと驚くのがiPhoneで有名な米アップル社がEV参入を発表したことだ。
本書は日経新聞の連載に加え、技術ジャーナリストの解説や関連の雑誌記事などで再構成した「アップルカー」とその周辺の状況リポート。
EV化で自動車製造もハードからソフトへ移行。そのカギが車載ソフト基盤の「ビークルOS」だ。ウィンドウズかiOSかというパソコンと同じで、これを自社生産できるかが各社の競争のカギになっている。日経の取材力を生かした本書は部品メーカーの開発とEV対応の実態も明らかにしながら、単なる下請けではなく「パートナー」としての部品メーカーの重要性を印象づける。
(日経BP 2420円)
「日本車敗北」村沢義久著
ガラパゴス呼ばわりもトホホな話だが、おまえは負けイヌといわれるのもつらい。本書は「EV戦争」に日本は負けたという「現実を直視せよ」と突きつける。著者はゴールドマン・サックスなど米系の証券・コンサルタント企業を渡り歩いてきた市場のベテラン。本書ではトヨタが掲げる水素ガスを使った燃料電池車の構想を「亡国の技術」「燃料電池はバカ電池」と切り捨て、具体的に各種の論拠を挙げる。
実は著者は昔のフォルクスワーゲン・ビートルをEVにコンバート(改造)したユニークな車ライフを送っているという。改造したのは横浜の小メーカー。航続距離は短いが、帰宅後にこまめに充電し、軽井沢での暮らしを満喫しているとか。自宅ガレージの改造費用なども明らかにしているのがいい。
(プレジデント社 1870円)