「半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防」クリス・ミラー著/ダイヤモンド社

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「半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防」クリス・ミラー著/ダイヤモンド社

 半導体が経済のみならず政治や軍事においても死活的に重要になっている。本書は、技術、政治、軍事、経済など包括的に半導体の現在について説明する優れた概説書だ。

 1980年代、日本は半導体分野で国際的に圧倒的な優位性を保っていた。それが90年代になると崩れ始めた。このときに半導体の重要性に気付いていたのがソニーの盛田昭夫氏と政治家の石原慎太郎氏だったとミラー氏は指摘する。
<1993年、アメリカが半導体の出荷数で首位に返り咲く。1998年には、韓国が日本を抜いて世界最大のDRAM(引用者註*Dynamic Random Access Memory、記憶装置の一種)生産国となり、日本の市場シェアは1980年代終盤の90%から1998年には20%まで下落した。/日本の半導体分野における野望は、日本の国際的な地位の拡大を下支えしてきたが、今となってはその土台そのものが脆弱に見えた。『「NO」と言える日本』で、石原と盛田は、半導体分野での優位性を使えば日本は米ソ両国に力を行使できる、と主張していた>

 1993年に盛田氏が病に倒れた後、石原氏が半導体の重要性について説き続けたが、その主張は日本社会に影響を与えなかった。
<大半の日本人にとって、石原の主張はもはや支離滅裂だった。1980年代、半導体が軍事的なバランスを形づくり、テクノロジーの未来を特徴づけると予言した彼の考えはまぎれもなく正しかった。しかし、その半導体がずっと日本製のままである、という考えのほうは結果的にまちがいだった。/1990年代、日本の半導体メーカーは、アメリカの復活に押されて縮小の一途をたどった。アメリカの覇権に対する日本の挑戦は、その技術的な土台から脆くも崩れはじめたのだ>

 日本は80年代の成功体験から脱却できず、時代の流れを見損ねた。半導体の開発に関しては米国が圧倒的に強いが、量産に関しては米国も台湾に依存している。特にTSMC(台湾積体電路製造)が技術的に圧倒的な優位性を維持している。日本も国策として、最先端の半導体を量産できる体制を整えるべきだ。

 ★★★(選者・佐藤優)

(2023年4月25日脱稿)

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