「俳句が伝える 戦時下のロシア」馬場朝子編訳
「俳句が伝える 戦時下のロシア」馬場朝子編訳
「国境の列 避難の少女に サボテンの鉢」(ナタリア)。避難する少女が本や鉛筆、おもちゃでなく、トゲのあるサボテンの鉢植えを持ってきた。これは不服従の象徴である。子どもでさえも自分の意思を持っていることを表している。
「月の光 枕下に 大蒜(にんにく)ひと粒」(アレクセイ)。ニンニクは悪魔やコロナウイルスを追い払うと考えられている。小さな月の形をしていて、その対比が美しい。
「母は息子のもとへ ウクライナの地に 頭垂れ」(オレク)。ウクライナで死んだ兵士も少なくない。彼らの遺骨は母の元に送られたのだろうか。母親はウクライナの大地に頭を垂れるしかない。
ソ連時代の1935年に「おくのほそ道」が翻訳されて、ソ連崩壊後には俳句ブームが起きた。戦時下にロシア語で作られた54の俳句と8人の作者へのインタビューを掲載。
(現代書館 2200円)