「歴史の定説を破る」保阪正康著
「歴史の定説を破る」保阪正康著
近現代の戦争を新視点で分析した歴史テキスト。
日本が勝ったと言われている日清・日露戦争も見方を変えると、その勝ちは全く疑わしいものになるという。例えば日露戦争では南樺太やロシアが持つ中国の一部の権益を獲得したから日本が勝ったことになっている。
ただ、これはアメリカが仲介して日本に賠償金をあきらめさせた結果であり、ロシアは負けたとは思っていなかった。さらにロシアにとって日露戦争は、第2次世界大戦で日本に宣戦布告する口実になったともいえると指摘。
以後、第1次大戦からウクライナ戦争までを俎上(そじょう)に、「政治の延長として戦争を選択すれば、それによって敗者になる」ことを明らかにし、世に広まりつつある正義を守るために軍事力を増強するという論理に警鐘を鳴らす。
(朝日新聞出版 891円)