「樹木の世界大図鑑」クリス・クレネット、フィオナ・スタッフォード監修 清水晶子訳

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「樹木の世界大図鑑」クリス・クレネット、フィオナ・スタッフォード監修 清水晶子訳

 地球上には6万種を超える樹木があるという。森林の木は、ほかの植物や動物を保護する「微気候」を作り出し、熱帯雨林では1ヘクタールに480種の木と4万2000種もの昆虫が生息。

 成熟したヨーロッパナラの木は、約2300種もの生き物を支え、そのうち326種は完全に依存しているそうだ。

 地球上のすべての生き物が、もちろん人間も、その存在なくして生きていくことができないもの。それが樹木だ。

 本書は、さまざまな視点から人類と木の共生の歴史を解説した豪華図鑑。

 まずは木の定義にはじまり、その分類、そして約4億3300万年前に登場した最初の維管束植物がどのように進化をしてきたのか、さらに木が形成する森林という「社会」や、食料や木材などさまざまな用途で木の栽培を始めた祖先たちとの関係まで、基本を概観。

 その上で代表的な樹木についてそれぞれ解説してくれる。旧約聖書に頻繁に登場し、多くの国で文化的伝統に結び付けられる「レバノンシーダー」や、寿命が数千年にも及ぶ地球上でもっとも長生きの生き物の一つと知られる「ブリスルコーンパイン」など「花の咲かない木」(裸子植物)から、日本人にお馴染みの「サクラ」をはじめ、ドラゴンの血と呼ばれる赤い樹液と開いた傘のようなその珍しい外観で知られる「ベニイロリュウケツジュ」などの「花の咲く木」(被子植物)まで。80余種を取り上げ、各植物の科学的解説から、それらの植物が登場する神話や芸術、さらにその果実の利用法など、詳しく解説。お馴染みの植物はもちろん、知らなかった植物も次々と現れ、知的好奇心が刺激される。

 朝ドラで植物に興味を抱いた人には、次の扉を開いてくれる格好の参考書になってくれるはず。

(河出書房新社 6985円)

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