内田監督は観客の目が着物全体に行かないように「筋肉質の太ももを見せるデザインにしろ」と指示した。衣装係は前身頃の幅を狭くして、立ち回りの際に、着物の前がパッと開くものにした。そういう知識を持って着物姿の高倉健を見ていると、確かに、どんな時でもすぐに脚が見える。映画監督の細部にまでこだわる「見せる工夫」に脱帽である。
▽のじ・つねよし 1957年生まれ。美術展のプロデューサーを経て作家活動へ。「サービスの天才たち」(新潮新書)、「イベリコ豚を買いに」(小学館)など著書多数。最新刊は「アジア古寺巡礼」(静山社)。「高倉健インタヴューズ」(プレジデント社)が話題に。