<第7回>聞きどころは健さんが腹からしゃべる英語力
【ブラック・レイン (1989年・パラマウント)】
高倉健はアメリカ映画にもいくつか出演している。「燃える戦場」(1970年、ロバート・アルドリッチ監督)、「ザ・ヤクザ」(1974年、シドニー・ポラック監督)、「ミスター・ベースボール」(1992年、フレッド・スケピシ監督)。なかでも知られるのがマイケル・ダグラス主演の「ブラック・レイン」だ。ただ、この映画で強烈な印象を残したのは悪役を演じた松田優作である。高倉健はマイケル・ダグラス扮するニューヨークの刑事に翻弄される役で、健さんファンからすればちょっと不本意な感を抱くかもしれない。
だが、この映画には健さんの見どころというより、「聞きどころ」がある。それは高倉健の英語だ。彼は福岡県の進学校、東筑高校の時代から英語が好きで、アメリカ映画を見ては英語の発声、発音を勉強した。同校では英会話研究会(ESS)の部長をやっていたこともある。明治大学に進学してからも「貿易商になるため」英語の勉強だけは続けていたという。
高倉健の英語について、ひとりの証言者がいる。永島達司(故人)。外国人タレントの招聘会社、キョードー東京の創業者で、ビートルズ、マイケル・ジャクソンなどを日本に呼んだ男だ。戦前生まれの永島は子ども時代をアメリカ、イギリスで過ごし、品格のある英語を話した。ビートルズのジョージ・ハリスンは「タツ(永島)の英語はエリザベス女王より上手だ」と語っていた。