著者のコラム一覧
野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第4回>絶食して撮った冒頭のラーメン、カツ丼シーンの迫力

公開日: 更新日:

【幸せの黄色いハンカチ (1977年・松竹)】

 寅さん映画のシリーズを監督した山田洋次が高倉健に出演してもらうために作った映画が「幸福の黄色いハンカチ」。山田監督のキャスティングで、渥美清も出演している。

 原作はアメリカの作家ピート・ハミルのコラムから取ったもの。蛇足ではあるが、ピート・ハミルには友人だったフランク・シナトラを描いた「ザ・ヴォイス」という傑作ノンフィクションがある。

 物語は網走刑務所を出所したばかりの炭鉱夫(高倉健)が、妻(倍賞千恵子)が待っている夕張へ戻る旅路を描いたものだ。

 高倉健扮する主人公は酒を飲んだうえのケンカで人を死なせたことがある。そのため、刑務所で服役していたのだが、所内から妻に向けて、次のような内容の手紙を送っていた。

「もし、いまでもオレのことを待っているのならば、物干しに黄色いハンカチを結び付けておいてくれ。ハンカチがあればうちに戻る。なければ、オレはどこかへ行く。おまえの邪魔はしない」

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