「狼よさらば」平和主義者の中に眠る“狩猟本能”が目覚める

公開日: 更新日:

 ただし問題がある。通常の仇討ちは敵を成敗したら決着がつく。江戸時代の仇討ちも同じ。本懐を遂げた段階で報復は終わった。ところがカージーは襲撃犯が誰なのか分からないため不特定多数の強盗を真犯人に見立て、射殺するしかない。悪人殺しで気は晴れるが、終着点がないので新しい獲物を求め続ける。シャブ中のキメセクのように延々と喜びが続くわけだ。しかも市民の支持が心地よい。心理学者がよく言う「テロリストは大衆の反応を気にして行動を起こす」となる。

 かくしてカージーは血に飢えてしまう。警察から自分が疑われていると警告されながらも、包囲をかいくぐって強盗狩りに出掛けるのは自分を止められないからだ。そこには死にたいという願望もあるようだ。

 要するに平和主義者の中に眠っていた狩りの本能が目覚めてしまった。結末はそのことを暗示している。見終わって、これからカージーがどんな人生を歩むかを想像してしまうのだ。

(森田健司)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動