歌舞伎座vs新橋演舞場“新作歌舞伎”対決の行方…シリーズ化を期待したい「流白浪燦星」に軍配
第二部、神田松鯉の講談を原作とした新作『俵星玄蕃』は、セリフ劇としてしっかりしているので安心して見ていられる。尾上松緑はダークサイドに落ちた人物が合うのだが、今回の玄蕃も快活だが挫折と屈折のある人物。明るいが面倒臭いキャラクターをうまく出していた。
第三部の泉鏡花『天守物語』は坂東玉三郎が当たり役を中村七之助に譲った。玉三郎は演出と、脇役で出演。前半は七之助の富姫と玉三郎の亀姫の会話で進む。
かなりとんでもないことを話しているのだが、玉三郎だと異様な内容でもナチュラルに響き、普通の会話のようだ。しかし後半、七之助だけになると、泉鏡花の描く世界の異様さが際立ち、「天守物語は、こんなにも変な話だったのか」と驚いてしまう。これまで演じていた玉三郎が、いかに泉鏡花のとんでもなさと同化していたかを思い知った。
(作家・中川右介)