猿之助の代役・中車主演「菊宴月白浪」事件を連想させる「切腹してくれ」に客席から笑いが
昼の部は3代目猿之助が復活させた、忠臣蔵の後日譚という設定の鶴屋南北作「菊宴月白浪」。3代目が最後に演じてから、32年ぶりの上演。4代目猿之助主演で発表されていたが、市川中車(香川照之)が代役となった。
もっと頻繁に上演してもいいのにと思うくらい、面白い芝居だった。だが中車は一生懸命なのはいいが、余裕がないので、見ているほうも疲れてしまう。やはり猿之助で見たかった。もっと、面白くなったはずだ。
中車が演じる斧定九郎が、父に「切腹してくれ」と迫る場面では、誰もがあの事件を連想してしまうが、客席からは笑いが起きた。歌舞伎ファンのたくましさというか、したたかさがある。
■歌舞伎界総帥になった團十郎のこだわり
夜の部で團十郎が意図したのは、歌舞伎興行の正常化であろう。コロナ禍で4部制や3部制となり、演目の並べ方が場当たり的になっていたのを、一番目は時代物、二番目は世話物、最後は舞踊という、正統的なものに戻した。歌舞伎界総帥になった團十郎のこだわりだろう。