「50歳過ぎて性格に変化アリ」なら認知症を疑うべき
一方、脳の神経細胞が壊れて起こる症状が「中核症状」。代表的なのが物忘れだ。認知症で最も多いアルツハイマーは、海馬の萎縮が一般的で、中核症状が先に見られ、次第に周辺症状が表れるようになる。
「しかし、それは典型的なアルツハイマーのことです。中には、海馬の萎縮とともに、前頭葉などがちょっと萎縮して、周辺症状、つまり性格の変化が目立つこともあります。また、物忘れがひどいことに漠然とした不安を感じているため、他人から指摘された時、気持ちを抑制できず、不安を怒りに変えて放出してしまう。これらのケースは珍しくありません」
認知症は、残念ながら「治らない病気」だ。しかし、早期発見するかしないかは、その後の進行に大きな影響を与える。
「早い段階で薬を処方すると、進行のスピードを抑えられます。軽度の認知症なら、社会生活を普通に送ることができます。私は、明らかに脳の萎縮が見られない場合でも、認知症の気があると判断した場合は、薬を処方することがあります」
賢治さんは周囲の勧めもあり、妻を心療内科に連れていった。そこから紹介された脳神経内科で「認知症の一種であるピック病」と診断された。現在、薬物治療を受けている。