著者のコラム一覧
佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

乳がんは手術から20年後に転移する場合もある

公開日: 更新日:

 一般的に、乳がん女性ホルモンに影響されるがんなのですが、ホルモン剤が全く効かない、そしてHER2遺伝子過剰発現のない「トリプルネガティブ」というタイプが難治性として問題になっています。

 また、非常に少ないながらも乳がんは男性にもあり、やはりホルモンの環境に左右されます。以前、乳がんの手術を受けてから2年が経過した48歳の男性が、私が勤務する病院にやってきました。胸水がたまって呼吸困難がある状態でした。その時は睾丸を摘除することですぐに胸水はなくなり、効果が認められました。このことからも、ホルモンが影響していることが分かります。

 女性の乳がんでホルモン治療のため、卵巣摘除の方法も行われてきましたが、現在は、それに代わる薬物がたくさん使用されています。乳がんにおけるホルモン治療、抗がん剤治療、分子標的薬の開発は目覚ましく、効果のある薬が次々に登場しているのです。それに伴い、術前の化学療法でも手術時にはがんが小さくなっていることが多くみられるようになりました。

 再発は、まれに手術後5年以上たってから、中には20年後という場合もあります。ある女子大の教授をされていた女性が、肝臓に多数の腫瘍があって入院されたことがあります。肝臓で針生検をしたところ、そのがん組織は20年前に乳がんの手術をした時の組織と一致しました。20年後の乳がん転移が判明したのです。こうした場合もあるので、再発なく5年が経過しても定期的な検診が必要でしょう。

 乳がんの治療や薬剤は確実に進歩しています。しかし、中には非常に進行の早いタイプがあり、薬剤にも抵抗し、不幸な転移となる方もいらっしゃいます。完治のためには、やはり早期の発見、早期の診断・治療が大切です。ぜひとも定期的に検診を受けるべきです。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動