乳がんは手術から20年後に転移する場合もある
「今、娘から電話があって、乳がんと診断されたというんです」
ある日の午後、同じ職場で働いていたWさんが、涙ながらに私の診察室に駆け込んできました。
23歳で独身の娘さんは、間もなく術前化学療法と手術を行い、手術後は放射線治療、化学療法と続きました。状態は次第に落ち着いていきましたが、最初の数カ月間は体の闘いばかりではなく、親子とも“心の闘い”が他人には想像しがたいほど大変なものでした。
Wさんは「どうして娘が……。代わってやりたい……」と口癖のように繰り返していました。幸いなことに治療が奏功し、再発なく4年が経過しています。
乳がんは30代から増え始め、50歳をピークに、高齢になると減っていきます。女性のがんで最も多く、毎年約7万人が罹患しており、女性のがんの約20%を占めます。女性のがんでの死亡数は大腸がん、胃がんに次ぐ第3位で、年間約1万2000人が乳がんで亡くなっています。先日、乳がんで闘病中だった小林麻央さんが34歳の若さで亡くなり、大きなショックを与えました。