【パソプレッシン】尿量の調整など重要な役割を果たす
脳の視床下部で作られ、その下にある下垂体後葉から分泌される「パソプレッシン」というホルモンがある。別名「抗利尿ホルモン(ADH)」とも呼ばれ、腎臓に働きかけて尿量を調節する重要な役割を果たしている。東京都立多摩総合医療センター内分泌代謝内科の辻野元祥部長が言う。
「脱水になると体をめぐる血液量が減少しますが、それを頚動脈や大動脈にある『圧受容体』というセンサーが感知し、視床下部に伝えます。また、脱水で血中の塩分濃度が上昇すると、視床下部自体の『浸透圧受容体』もシグナルを感知します。するとパソプレッシンの分泌が増加し、腎臓での水の再吸収を促進して尿量を減少させ、脱水の進行を食い止めようと働くのです」
逆に、水分を過剰に取り過ぎたあとは、パソプレッシンの分泌が低下し、尿量が増加するという仕組みになっている。通常、成人の1日の排尿量は平均1~1.5リットル程度だが、「尿崩(にょうほう)症」という病気になると1日の排尿量が3~10リットルと増加し、多飲多尿になる。この病気の発症にもパソプレッシンが関係する。