膵がんの5年生存率0%を変える「コンバージョン手術」とは 最新治療に取り組む名医に聞く
■手術不能の3割が手術可能になり5年生存率が向上
藤井教授が最近発表した富山大学付属病院でのコンバージョン手術の成績では、手術ができない局所進行の膵がん144例のうち、3割に該当する48例が手術可能となり、その後の5年生存率が58.6%。
膵がんは、手術可能例を入れても、5年生存率は男女ともに8%台。前述の通り、手術ができなければ5年生存率は0%だ。それが富山大学付属病院のコンバージョン手術では58.6%なのだから、かなり良好な数字だ。なお、藤井教授が用いた抗がん剤はゲムシタビンとナブパクリタキセルで、平均9カ月間投与。その後に放射線治療を行い、手術へと進む。
膵がんのコンバージョン手術を行っているのは富山大学付属病院に限らない。しかし、「3割が手術可能。5年生存率が約60%」という医療機関はほかにない。ほかでは、手術可能となるのは1割程度だという。
理由として、ひとつは、藤井教授が名古屋大学に在籍時代、膵がん治療の第一人者である中尾昭公医師(現・名古屋セントラル病院院長)に薫陶を受けたことが挙げられる。中尾医師は、門脈に浸潤した膵がんを手術可能とする術式を確立したことで知られる。