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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

繰り返される学級閉鎖 …いまこそマスク着用の有用性についての科学的検証を行うべき

公開日: 更新日:

 これに対して、森林太郎(森鴎外)をはじめとする細菌説をとる東大のグループは、たまたま細菌による流行が起こらなかっただけだと批判したわけだが、その批判自体は妥当なものであった。

 ただ批判が妥当にもかかわらず、事実は「洋食で脚気が予防できる」ということであった。原因がわからなくても、事実に基づき脚気を治すことができたのである。ただこの論争は、脚気の原因がその後に発見されるビタミンBの欠乏によるものだと確定されるまで決着はつかず、海軍でほぼ予防された脚気による死亡が、陸軍では出続けることになる。病態生理は仮説にすぎないという金言はここにも生きている。

■生徒のマスク着用への批判が多いからこそ科学的検証が必要

 閑話休題。話を学校でのマスクの問題に戻そう。ここで残念だったのは、この地域の学校でマスクを中止する際に、中止する学校と中止しない学校に割り付けたクラスターランダム化比較試験(注)が行われればよかったのではないか、という点である。生徒のマスク着用に対しては批判も多く、マスク着用の継続自体が困難だったのかもしれない。しかし、だからこそ、マスク着用の効果がランダム化比較試験で示す意義はあると私は考える。効果がはっきりしないものを強要するわけにはいかないからである。日本でも同様の状況はあるが、それは日本においてもランダム化比較試験を行うニーズがあったということでもある。

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