名郷直樹
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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

論文と現実のギャップ…「サブグループ分析」で目の前の個人に近い人で解析

公開日: 更新日:

 前回と同じ「論文結果と個人のギャップ」についてである。両者のギャップは埋めがたい。目の前の個人にぴったりする情報があることはまれである。ギャップがあるから論文に意味はないというのは簡単だ。しかし、意味がないと言ってみたところで、目の前の現実、個人にピッタリ合う論文がない以上、それに近い目の前の情報を意味あるものとして利用する選択肢以外にはない。

 前回は、論文の対象者と現実の対象者の違いそのものについて検討したが、今回はそのギャップを埋める手法の1つを紹介しよう。引き続きバングラディッシュの研究である。マスク着用群は、サージカルマスクと布マスクの2種類を使用している。これまで紹介してきた結果はその2つを合わせたものの結果である。

 仮に自身がサージカルマスクをしているとしたら、サージカルマスクのグループだけでどうであったかが知りたいはずだ。その期待に応えるべく、この論文ではサージカルマスクと布マスクのそれぞれの検討結果が報告されている。いずれも相対危険で報告されており、サージカルマスク群では相対危険0.874、95%信頼区間0.809~0.939、布マスクでは0.907(0.823~0.991)という結果である。いずれも全体の結果と大差なく、マスクの種類によって統計学的な効果に差はないという結果である。

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