著者のコラム一覧
堀田秀吾明治大学教授、言語学者

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

「他者からの視線」はパフォーマンス向上の一因になる

公開日: 更新日:

 人間が矛盾する認知を同時に抱えた状態や、そのときに覚える不快感を表す社会心理学用語に「認知的不協和」があります。

 かつては、現実と理想に悩むのであれば、理想を引き下げることで認知的不協和を解消するしかありませんでした。しかし、今ではネットやアプリによって、理想を変えずに現実の自分を仮想世界で変えられるようになりました。現実と理想とは別に、現実と仮想現実の自分に悩むという、新たなギャップが生まれているとも言えます。

 実際、他者の視線と自尊心は関係性が深い。当連載でも、過去に「化粧をすると自尊心が向上する」という研究を紹介しましたが、自尊心の低下は社会的感情に悪影響を及ぼす可能性があると示唆されています。知らず知らずにアプリで加工を繰り返していると、無意識のうちにリアル社会における自尊心を低下させてしまうわけですから、加工はほどほどにとどめておくことが賢明でしょう。

 ほかにも、私たちが想像している以上に、他者の視線は私たちの行動に影響を与えます。

 1920年代から30年代にかけて、アメリカのウェスタン・エレクトリック社のホーソーン工場で行われた一連の実験で「ホーソーン実験」と呼ばれるものがあります。労働条件の変化が労働者の生産性にどのような影響を与えるのかを調査したところ、労働者が注目を受けることで生産性が向上することが示唆されました。他者から見られているということが、パフォーマンス向上の一因になるというのです。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇