広がる義援金詐欺の巧妙手口と悪辣…能登半島地震「心配しています」と同情装いダマす
PayPay残高送金をXで募る新手の手口
最近はPayPayの残高送金機能を悪用した手口もある。地震発生の1月1日には早速Xに、「石川県能登市で起きた地震復興に向けた募金を開始します。津波被害者申請者に緊急のお金を振り込みます」と募金を促す投稿が見つかった。「被害者申請者」など日本語がたどたどしいほか、能登町を「能登市」と誤認するなど明らかに文面がおかしい。PayPay側も能登半島地震の被災者を名乗って義援金を募る投稿については、「見知らぬ人との残高のやりとりをせず、支援にあたっては相手を十分に確認し、確認できない場合や少しでも怪しい場合は取引をしないでください」と注意を呼びかけている。この“少しでも怪しい場合”という部分が重要になる。
消費者庁や金融庁も手をこまねいているわけではない。消費者庁は過去に寄せられた手口として「〇〇市役所からです。義援金を募っています。あとから市の職員が訪問します、と電話があった」「災害救済のために名産品を代引配達で送るので協力してほしい、と電話があった」「災害の募金をしたら投資のツールを提供するという募金に応募したが全く儲からない」といった事例を紹介している。金融庁も「有名なボランティア団体を名乗り、電話やFAX等を用い、当該団体の募金口座と異なる口座に義援金を振り込ませようとする」「SNSにおいて、存在しない住所を示しつつ救助要請を行い、救助がなされたとの報告とともに、今後の資金のための寄付と称して電子マネーの送付を求める」などと注意喚起している。
■被害に遭わないためにすべきこと
義援金詐欺の被害に遭わないためにはメディアなどで公表されている口座番号をさらに再度、自分で検索するなどして確認することが大事。少なくとも、公的機関が電話などで軽々しく支援を求めることはあり得ない。
石川県によると、11日時点で37億5308万円余の義援金が届けられているという。義援金は自治体が指定する銀行口座に振り込むほか、日本赤十字社などを通じて行うものもある(表参照)。
仮に石川県に振り込んだ場合は、預かった義援金を石川県災害義援金配分委員会が各地の被害に応じて配分を決め、市町を通じて被災者に届けられる。一方、珠洲市や輪島市などの指定口座に直接振り込んだ場合は、市町の復興及び被災者の方々のために使われる。
義援金の振込手数料については、全国地方銀行協会加盟の金融機関とゆうちょ銀行の“窓口”、また全国銀行協会加盟の一部銀行で免除されている。ただ、ATMやインターネットバンキングでの振り込みは手数料がかかるので気を付けたい(北國銀行はこれも免除)。
善意の義援金まで奪い取ろうとする人でなしの詐欺師たちには、絶対に1円たりとも与えてはいけない。