「不登校は心の病です」日本初の不登校専門クリニック院長がズバリ! 治療法はあるのか?
明らかな理由がなければ小児科に相談を
不登校児を専門に診る医療機関は少ない。背景には診断基準という独特の仕組みと、子どもの精神疾患治療の難しさがある。
【Q】不登校外来はなぜ広まらない?
【A】そもそも最初の相談窓口である学校には医学的な見地がありません。スクールカウンセラーは児童の悩みを聞いて寄り添うプロなのですが、実は精神疾患が理由の不登校には悩みそのものがほとんどありません。そうした児童に「なんで学校に来られないの?」と聞いても、子どもは「わからない」と答えるだけ。仮に理由を答えても、それは聞かれたから思いついたことを言っているだけで、それが解消されても学校には来られません。そのうち症状が悪化し、やがて家からも出られなくなる。そうなると、親御さんもますます社会との接点が少なくなり、医療機関を受診するというアイデアも湧きにくくなります。また、この段階になれば子ども自体が医療機関を嫌がり(学校を怖がるくらいですから病院はなおさら怖い)受診そのものができないケースもかなり多いです。
医療側としても、子どもの精神疾患を診るのは非常に難しいのです。そもそも精神疾患は身体疾患のように症状を数値で示せないので、特別な診断基準を用いて疾患とみなせるかどうかを判断します。しかし、子どもは大人のように自分の症状を正確に言語化できないので、ほとんど使えません。薬も大人の場合と違って個人差が大きく出るため試行錯誤を繰り返して使う必要がありますし、副作用が簡単に、しかも強く出る傾向があります。さらに、子どもを正しく理解するには臨床心理学的な素養も必要です。つまり診断にしても投薬にしても高度で職人芸的なスキルが求められるため、児童精神科を専門としている医師の数は非常に少ないのです。
運良く近くにそうした医師がいても、命の危険があるような重症な子どもを優先せざるをえず、不登校レベルでは診察の予約すら難しい状況です。私のクリニックでも現在新規患者の受け付けをストップしており、受診難民は全国に何万人もいると思われます。